のびゆく農業:No.1045-1046:EUワイン基本規則
■原文:
・EUワイン基本規則の解説と翻訳
■発行:2019年11月30日
■解題・翻訳:髙橋 梯二(トウールーズ大学法学博士)
■対象:EU
■ページ数:87p.
■在庫:あり
■目次:
- 解題
- EUワイン基本規則の解説と翻訳
- Ⅰ.ワイン分野における定義
- Ⅱ.第一章 EUワイン規則における生産調整及び支援措置
- Ⅲ.第二章 ワイン等ブドウ生産物の分類、定義、呼称及び販売上の表現
- Ⅳ.第三章 ワインの重要醸造行為基準
- Ⅴ.第四章 ブドウ品種使用制限
- Ⅵ.第五章 ワインの輸入に関する特別規定
- Ⅶ.第六章 ワイン部門における原産地呼称及び地理的表示並びに伝統的表現
- Ⅷ.第七章 ワイン部門における表示及び提示
- Ⅸ.第八章 ブドウ畑の登録義務等ブドウ及びワインの生産・流通上の記録義務
- 付録 ブドウ畑の登録義務、ブドウの収穫量及びワインの生産量等の申告義務並びにワインの出入の記録義務等に関する委員会詳細規則No436/2009」の抄訳
■解題より:
欧州連合(EU)のワインに関する規則(法律)は、非常に複雑でかつ多くの規制がなされており、理解するのが難しいといわれている。これは、EU加盟国がそれぞれに形成してきたワインに関する制度・規則等がすでに多く存在している中でEUの共通市場を作りあげていくための加盟国の制度・規制の調整と統一化が図られたが、加盟国間の調整が容易でなく複雑であったためであろう。
欧州の農産物の共通市場の形成は、EUの前身であるEC設立の原点の一つであり、ECにとって不可欠なものであった。欧州にとって重要産品であるワインは穀物、牛肉、牛乳、砂糖などとともに共通市場の対象品目に含まれていた。また、農産物共通市場に関する政策は、ECの共通農業政策と連動するものである。
ワインに関するEUの規則が成立したのは1962年であり、その後、徐々に改正され充実していったが、EU加盟国、特に西ヨーロッパのラテン系の国ではかなり確立したワインの法制度がすでに存在し適用されており、EUとして十分統一したワイン法を成立させるには多くの困難があった。
ワイン法として整ってきたのは2008年のEUでのワイン制度の改革(理事会規則No 479/2008の制定)(以下、「2008年ワイン基本規則」という)であろう。この頃になるとEU加盟国もEUワイン規則に則して制度を改正し、さらに、醸造行為規則、表示規則は、EU規則に全面的に依存するようになり、加盟国の法律等は、今では、EUの規則以上に厳格な規制を定めることなどEUのワイン規則を補完する加盟国独自の規制と加盟国の権限とされている規制等が中心となっている。
その後、2013年になって「2013年共通市場単一規則」が成立し、2008年ワイン基本規則は、ほとんどそのままこのEU単一規則に分散して編入された。この単一規則にはワイン以外の共通市場対象農産物に関する規則が含まれるが、この単一規則の中でワインに関係する諸規則の総体が「2013年ワイン基本規則」ということができよう。冒頭で述べたように本稿では主としてこの2013年ワイン基本規則の各条の翻訳と解説を掲載しており、これが 本稿の「EUワイン基本規則の解説及び翻訳」である。