お知らせ
農政調査委員会からのお知らせ(最新5件分)です。
農政調査委員会は農業、農村の現場から提言します - Since 1962
農政調査委員会からのお知らせ(最新5件分)です。
令和7年8月
(事業の趣旨)
この研究奨励事業は、生前わが国農政界において指導的役割を果たしてこられた故東畑四郎氏の業績を記念し、同氏が深い関心を寄せてこられた食料・農業・農村問題の実証的調査研究が新進の研究者等によって推進されることを奨励するため、一般財団法人農政調査委員会が事業主体となって実施するものです。
農政調査委員会は、1961(昭和36)年に設立された財団法人で、食料・農業・農村の基本問題についての実証的調査研究機関として、これまで数々の業績を発表しておりますが、この記念事業を実施するため、学識経験者、農業団体指導者等による審査委員会を設け、毎年定めるテーマについて優れた意図と内容を備えた調査研究計画を持つ者を選考し、その調査研究に要する費用について助成し、その成果を公刊しています。
食料・農業・農村問題が転換期を迎え、同時に、国民的関心が高まっている今日、多くの若手研究者及び関係実務者が、この事業の趣旨をご理解の上、下記の要領に従って応募されるよう期待しております。
(なお、募集対象となる研究は経済学や社会学等の社会科学の分野であり、自然科学を対象とするものではありません。)
1.わが国農業構造・経営の新たな動き
2.わが国の食料・食品流通、消費の変化と国際化戦略
3.農村・地域振興の新たな動きと課題
この事業による調査研究費の助成を希望する者は、事業実施要領に従って、所定の様式による応募用紙(「調査研究計画書」)に記入し、2025(令和7)年10月10日までに応募下さい。
応募用紙は、下記からダウンロードできます。
以下の諸機関に所属し、40歳未満の個人を原則とします。組織としての応募は受け付けません。また、調査研究費は直接、助成対象者に支給するものとします。
1.大学・試験研究機関等の研究者及び学生・大学院生
2.国、地方公共団体、農業関係の団体または企業の役職員
1.助成対象者は、提出された調査研究計画書に基づき、審査委員会において選考いたします。選考の結果は、農政調査委員会から2025年12月末日までに発表し、個別に通知いたします。
2.助成対象者は、2026年12月末日までに、その研究成果を所定の成果報告要領に従い、報告書として提出していただきます。
3.報告書は、審査委員会の審査を経て、農政調査委員会の刊行物「日本の農業」「農」として公刊もしくは「東畑四郎記念報告書」としてまとめます。なお、著作権等は農政調査委員会に帰属します。
一般財団法人 農政調査委員会「東畑四郎記念研究奨励事業」係
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3番29号 日本農業研究会館4階
TEL:03-5213-4330(代) FAX:03-5213-4331
なお、お問い合わせは原則としてE-mailまたはFAXにてお願いいたします。
■発行日:2025(令和7)年7月31日
■編著:農政調査委員会
■在庫:あり
■ページ数:p.73
■目次:
■「第5章 堂島コメ平均上場の1年-現状と課題」より:
1.出来高の伸び悩み
2024年8月13日に上場し、当初の出来高は、100枚未満であったが、年末から年初に200~400枚程度の取引高に増大した。しかし、指数取引が生産者、流通業者に馴染みがないことや現先連携が制度はあるものの活用整備されていないため、生産者、流通業者の参加・取引が少なく、取引数量が伸び悩んでいる。また、取引開始以来、米需要がタイトであり、価格が高騰し続けたため、生産者や流通業者がリスクヘッジをして米を販売・確保する必要がなかったことも、取引数量の伸び悩みの一因でもある。
2.先物価格は相対取引価格と連動
価格の動向をみると、価格の初値は、17,200円であった。当時の相対取引価格は、令和5年産6月が15,865円、7月が15,626円と比べると高値であった。米不足という需給状況を反映し、9月初までストップ高が続き、9月4日には24,000円となった。しかし、需給事情や農協概算金や令和6年産9月相対取引価格か22,700円であったことを反映し、価格が低下した。その後、11月以降になると、堂島コメ先物価格は、毎月公表される「相対取引価格」に概ね連動して推移した。一方、「全POS取引平均価格」は、2024年8月以降高騰し続けている。先物価格と「相対取引価格」とは相関関係があるが、全POS取引平均価格とは乖離している。
3.随意契約備蓄米放出後の堂島コメ平均価格
随意契約備蓄米の放出と販売が開始され、さらに、追加の放出が決定された。その後の米の小売価格、相対取引価格は、さらに令和7年産の出来秋価格が注目される。堂島の先物取引価格の推移をみると、将来価格の先取りをする動きがみられる。随意契約備蓄米の販売が開始された6月1日から2週の間に10月限が1,750~1,800円の低下、12月限が1,400円の低下となった。2週の間には、ストップ安の日もあり、今後の取引価格の動向が注目される。JA等の令和7年産の概算金は、高値で最低補償と公表されている。しかし、主食用米の作付面積増、備蓄米の放出等により、令和7年産の米需給及び価格動向は、不透明になっている。随意契約備蓄米放出後の堂島の先物価格の推移をみると、令和7年産米の将来価格の先行指標の形成となる可能性もある。今後の堂島の10月限、12限価格の推移、出来高の動きが注目される。とくに、JAの概算金が高値で公表されており、従来は概算金価格が出来秋の産地価格に影響を与えているため、堂島の先物価格(10月限、12月限、2月限)を生産者や流通業者がリスクヘッジとして活用できる可能性もある。
4.堂島コメ平均の今後の課題
しかし、リスクヘッジとして、堂島コメ平均指数を活用するには、幾つかの課題がある。まず、堂島コメ平均指数は、指数取引のため、最終的には差金決済であり、生産者・流通業者となじみがない。また、堂島コメ平均では、指数現物市場(みらい米市場)が制度化されているものの、コメ不足により、現物市場が賑わなく、現先連携の稼働実績がない点である。
さらに、堂島コメ平均価格と各産地・銘柄との格差も明確となっていない。
以上の諸点のため、生産者、流通業者が堂島先物取引を活用してリスクヘッジの取引に参加するには課題がある。堂島コメ平均の活用についての関係業者への周知と共に現先連携を含む活用促進の体制の整備と堂島平均価格と現物取引価格との格差の明確化が、堂島コメ平均の活性化に必要であり、2年目を迎えての課題となっている。
■発行日:2025(令和7)年7月1日
■編著:農政調査委員会
■在庫:あり
■ページ数:p.149
■目次:
第一部 米需要・生産予測と令和の米騒動が提起した生産調整政策の課題
第二部 従来型農政からの脱却の方途
第三部 米輸出拡大の意義と現状・課題
あとがき-揺らぐ米産業・水田農業の存立基盤と必要な政策転換(一般財団法人農政調査委員会 吉田俊幸)
■「あとがき」より:
本書は、五十数年にわたる米減産・生産調整政策及び離農促進により米産業・水田農業の存立基盤が揺らいでおり、米増産・米輸出拡大への政策転換の必要性と直接支払い等の課題を提起する内容である。
第一部「米需要・生産予測と令和の米騒動が提起した生産調整政策の課題」、第二部「従来型農政からの脱却への方途」、第三部「米輸出拡大の意義と現状・課題」の3部構成となっている。
第一部は、「第1章 米穀流通2040ビジョン-野心的シナリオの要点」(山﨑)と「第2章 令和の米騒動」-原因と今後の課題」(熊野)であり、中期的な米需要・生産予測及び令和の米騒動の総括から政策転換の必要性を詳細に論じており、第三部への課題提起でもある。
2024年に、「新しい食料・農業・農村基本法」が、2025年に新しい「食料・農業・農村基本計画」がそれぞれ制定された。食料自給率の向上とともに農産物輸出が位置づけられ、とくに後者では2年後水田農業政策の見直しとともに米輸出の大幅な拡大が計画目標となった。しかし、その内容は、不明確であり、従来までの米減産と生産調整の枠内である。
2040年の主食用米の需要予測は、農林水産省が対2020年比31%減の493万t(新しい食料・農業・農村基本法作成のための資料)であり、全米販が同41%減の375万t(米流通2040ビジョン、農林水産省のデータに高齢化の進展による需要減を加味した推計)である。
さらに、全米販は米生産者が2020年対比65%減の30万人、生産量が50%減の353万tと予測している。同時に、新たな基本計画作成部会の予測によると、2030年の経営体数の予測は2020年の81万経営体から54万経営体へ33%減である。とりわけ、米・麦・大豆土地利用型経営体は60万経営体から27万経営体へ54%の減である。米・麦・大豆土地利用の作付面積は、2020年の216万haから142万haへ35%の減である。
主食用米の需要量及び米等の土地利用型経営体及び作付面積の予測は、米産業・水田農業が2030年・2040年には、その存立・継続が困難となる指標でもある。しかも、これらの現状と予測は、五十数年にわたる米減産・生産調整政策及び離農促進・規模拡大、低コスト化政策の結果である。しかし、新たな基本法と基本計画では、その枠組内での部分的改革に留まっている。したがって、予測を大幅に改善する米需要量と米・水田農業を見込むことが困難であり、さらに悪化する可能性がある。
全米販の「ビジョン」では、2040年の流通業者の経営が赤字となり国内の米生産が需要を賄いきれなくなる可能性を直視し、「野心的シナリオ」を作成した。野心的シナリオは、輸出などによる需要拡大、生産支援等を通じて、米産業業界が魅力的な産業とし2040年の米需要量を722万tに拡大する画期的な内容である。そのための具体的な米産業・水田農業政策が求められる。
さらに、令和の米騒動は、「供給を抑え米価の維持を優先する旧来型の農業政策、(つまり、生産調整政策)にあり、いまこそ政策をみなおす好機といえる(日経新聞2024年9月2日)。なお、「令和の米騒動」-原因と今後の課題」では、「流通のめづまり」(農林水産省)ではなく、生産調整による米減産が主要な原因であり、米不足・価格高騰を契機とし、多様な流通チャンネルが形成されていることを事例に基づいて示唆している。
まさに、米産業・水田農業を維持・発展させ、魅力ある産業にするためには、政策転換が求められている。第二部では、政策転換の方向について、米増産・米輸出と直接支払いおよび稲作・水田農業を維持・発展するための農地政策とその運営の在り方を各論者がそれぞれの立場から検討している。
第二部「第3章 日本の安全保障を脅かす農政リスク」(山下)では、「従来型農政への脱却と減反廃止の意義」-輸出拡大、食料自給率向上、直接支払いをはじめ農地行政改革等、多面的な農政改革の方向を提起している。「第4章 日本の直接支払いの現状と本格的導入への展望」(作山)では、直接支払いの定義、先進国の現状を踏まえ、「主要先進国の農業保護の主体は米国が消費者への補助金、EUが生産者への直接支払いなのに対し、日本は関税であり直接支払いは少ない」。「日本農業の収益性は長期的に悪化しており、┄主食用米に対する直接支払いへの恩恵は生産者だけではなく消費者に及び」が、財務省とJAグループであり、その政治的な均衡を崩す必要があると指摘している。
「第5章 農業・農村の持続的な発展と多様な担い手」(堀部)では、政府の「8割集積目標」を推進しているが、幾つかの事例から地域では機能しておらず政策体系として改善点を提起している。水田農業では「上層」(担い手)と中小規模、高齢農家とで農村社会が形成されており、上層だけでは農地・農村を維持できないと指摘している。さらに、農地政策の法律、手法が変化しているため、国と市町村の現場との間で信頼関係に齟齬が生じている。その中で、地域計画と集積率を最重視しないで地域農業の発展のためのより良い方策を検討する時期にきている。と述べている。
第三部は、米増産・生産調整の見直しの重要なポイントである米輸出拡大の意義と現状・課題についての報告と検討である。「第6章 米輸出の現状と可能性(その1)」は、商業用米輸出量第2位のクボタグループの米輸出の取組と今後の課題である。クボタグループの米輸出は、玄米輸出・現地精米、外食向け輸出戦略である。そのために、輸出米の品質・在庫管理、納入先への指導等を行っているが、今後は、現地での品質・価格競争を強化するとともに生産者には交付金とセットで主食用米と同じ水準の所得を確保し、米生産の一形態として輸出を位置づけることをめざしている。
「第6章 米輸出の現状と可能性(その2)-ハワイ・アメリカでの米輸出の可能性-」では、ハワイに精米工場を建設し進出した戦略の報告である。ハワイは、米文化が定着しており確実な需要があり、日本米が他の国の米との品質・価格競争力を持つことを明らかにしている。さらに、アメリカへの米輸出拡大もアメリカの米需要から可能性があることを示唆している。
「第7章 米輸出の現状と本格的な米輸出拡大の条件と課題」では、米輸出拡大は食料自給率向上の最善の方策であり、米・水田農業及び地域農業維持・発展につながる。また、米輸出は麦・大豆の転作より安上がりな水田利用策であるとともに安上がりな備蓄システムでもある。米輸出は拡大してきているものの、生産量の1%程度である。輸出先の現状と産地の状況を踏まえた、市場での深掘りと販路の拡大が必要となっている。同時に、品質・価格競争力を強化するには、低コスト化とともに抜本的な支援策が必要となっている。
(補注1)米高騰を抑制するために、備蓄米は随意契約に変更した。さらに、農政・米改革のための関係閣僚会議を発足させ、生産調整等の見直し・米増産が検討されると推測される。前回の十数年前での関係会議の検討から直接支払いの案が検討された。
(補注2)トランプ関税は米輸出拡大のチャンスである。2024年のアメリカの米輸出量8,784tであり、交渉により関税が上昇する可能性がある。一方、アメリカと厳しい関税交渉の対象国は、米消費量が存在し、交渉の結果次第ではアメリカの米市場が空白になる可能性がある。カナダへの輸出量が2,138tであるが、アメリカからの米輸出15~20万tである。さらに、アメリカからのメキシコへの米輸出量69万tであるが、日本からの輸出は、332tである。欧州は国内の米需要を満たすために輸入に頼っており、イギリス、フランス、ベルギー、ドイツが主な輸入国である。FAOSTATの報告によると、2022年、この地域は531,925haで300万tの米を生産した。同時に、ITC Trade Mapのデータによれば、同地域は550万tを輸入しており、欧州はコメの純輸入国である。うち、3割がバスマティ米であるが、アメリカ米も輸出されている。
3 年連続の高温不作が懸念されている状況で、7日の雨が恵みの雨となることを期待します。米の閣僚会議では、米高騰が流通の目詰ではなく、米生産不足であったこと認め、同時に、米の増産と輸出拡大等に転換を提起され、米・水田農業政策も流動化しています。また、主食用米の作付が増加する一方、作況や政府の対応が不透明であり、その結果,7 年産米の需給・価格の見通しが不明確であります。以上の状況のもとで、米の需給・価格動向及び今後の政策をめぐる状況及び価格変動にともなう情報交換の場として第2回「米産業・米市場取引に関する懇話会」を 8 月 20 日(水)に以下のテーマにて開催します。
⑴ 「今年産の米需給・価格の見通し」
⑵ 「米・水田農業政策の推移と今後の課題」-米の閣僚会議、各党の米政策を踏まえた課題提起-
⑶ 「コメ指数市場上場 1 年と今後の展望(「希望受渡」とリスクヘッジ)」
第 1 報告「今年産の米需給・価格の見通し」についての各種資料、産地情報、アンケート結果による報告と参加者による討論である。
第 2 報告「米・水田農業政策の推移と今後の課題」では、コメ閣僚会議での米増産、輸出拡大の提起や各党のコメ・水田政策の改革の方向についての論点整理をします。令和の米騒動は、今後の産地・業界及生産調整等の米・水田農業政策の在り方が問われ、とくに、生産者も消費者も納得できる価格・所得政策等を議論したいと思います。
第 3 報告「コメ指数市場上場 1 年と今後の展望(「希望受渡」によるリスクヘッジ)では、堂島コメ平均を活用しての現物取引でのリスクヘッジに関する提案です。この提案を通じて、需給・価格変動に対応する相対取引のリスクヘッジの可能性についての議論が期待されます。
ご多忙中かと存じますが、多くの方々のご参加をお待ちしております。
⑴ 報告:「今年産の米需給・価格の見通し」 中島良一(福岡農産㈱会長)他
⑵ 報告: 「米・水田農業政策の推移と今後の課題」 事務局他
⑶ 報告・討論:「コメ指数市場上場 1 年と今後の展望(「希望受渡」とリスクヘッジ)」 ㈱堂島取引所
米産業・米市場取引に関する情報を HP に開設しました!
1.日時:令和 7 年 8 月 20 日(水) 13 時 30 分~16 時
2.場所:日本農業研究所会議室(1 階)
〒102-0094 千代田区紀尾井町 3 番 29 号
3.定員:50 名(会場参加者、リモートも可)
4.資料代:2,000 円
5.申込先:https://forms.gle/pt7vFSjZAUtgnxrL8
(QR コードからもアクセスできます)
E-mail: info@apcagri.or.jp (竹井、吉田)
Tel: 03-5213-4330 Fax: 03-5213-4331
米産業・米市場取引及び米政策が変化する状況の元、米産業・米市場取引に関する情報を定期的に提供します。この情報が米産業関係者の参考になれば、幸甚です。
「米産業・米市場取引に関する情報」(その1・令和7年7月11日)