現地農業情報-農:No.299:ルーラル・アメニティ保全のための費用負担 ―白米千枚田・姨捨棚田を事例に―
■発行日:2019年3月31日
■報告:吉村 武洋(長野大学環境ツーリズム学部助教)
■コメント:吉田 俊幸(一般財団法人農政調査委員会理事長)
■ページ数:92p.
■在庫:あり
- 構成
- 序 章.課題設定と分析枠組み
- 第1章.棚田保全事業の展開
- 第2章.白米千枚田における主な取り組み
- 第3章.姨捨棚田における主な取り組み
- 第4章.事例の比較
- 終 章.総括と残された課題
- 《私のコメント》 吉田 俊幸
■【問題の所在】より:
「日本の原風景」とも称される棚田は、ルーラル・アメニティとして農山村地域固有の条件を基礎に形成されてきた、環境的・文化的ストックである。棚田の多面的機能をはじめ、その重要性はますます高まっている。しかしながら、棚田での生産は平地と比較すると条件が不利であり、過疎・高齢化等の問題も重なるなかで、耕作放棄が懸念されている。棚田の公共財としての特質や地域固有財としての特質、棚田の利用に関わる利害関係が生じていること等を考慮すれば、保全のためには何らかの政策的介入が必要である。
国や自治体は棚田保全のためにいくつかの施策を展開してきた。また、棚田オーナー制度をはじめ、納税者以外も一定の費用負担をすることで棚田が維持されてきた。一方で、各種施策の実施にはそのための費用がかかり、だれがどのような論理に基づき費用負担すべきか、実際の費用負担はどのようになっているかを、それぞれ明確化する必要がある。本稿では、白米千枚田(石川県輪島市)と姨捨棚田(長野県千曲市)の分析を通して、棚田保全をめぐる費用負担の現状と課題を明らかにすることを目的とする。