2025年8月25日 : 第269集:米先物取引の機能と活用-堂島コメ平均を巡って-
■発行日:2025(令和7)年7月31日
■編著:農政調査委員会
■在庫:あり
■ページ数:p.73
■目次:
- 第1章 『米産業に未来はあるか』の総括と今後の課題-米先物取引の意義と期待(農林水産省新事業・食品産業部商品取引グループ 宮長郁夫)
- 第2章 米の指数先物取引をめぐって(新潟食料農業大学名誉学長 渡辺好明)
- 第3章 「ヘッジとは?」商品先物市場における価格変動リスクのヘッジ機能(株式会社グレイン・エス・ビー 葛西洋孝)
- 第4章 堂島コメ平均指数と現物との交換-ヘッジの具体的手法について-(日産証券株式会社顧問 河島毅)
- 第5章 堂島コメ平均上場の1年-現状と課題(一般財団法人農政調査委員会 吉田俊幸)
■「第5章 堂島コメ平均上場の1年-現状と課題」より:
1.出来高の伸び悩み
2024年8月13日に上場し、当初の出来高は、100枚未満であったが、年末から年初に200~400枚程度の取引高に増大した。しかし、指数取引が生産者、流通業者に馴染みがないことや現先連携が制度はあるものの活用整備されていないため、生産者、流通業者の参加・取引が少なく、取引数量が伸び悩んでいる。また、取引開始以来、米需要がタイトであり、価格が高騰し続けたため、生産者や流通業者がリスクヘッジをして米を販売・確保する必要がなかったことも、取引数量の伸び悩みの一因でもある。
2.先物価格は相対取引価格と連動
価格の動向をみると、価格の初値は、17,200円であった。当時の相対取引価格は、令和5年産6月が15,865円、7月が15,626円と比べると高値であった。米不足という需給状況を反映し、9月初までストップ高が続き、9月4日には24,000円となった。しかし、需給事情や農協概算金や令和6年産9月相対取引価格か22,700円であったことを反映し、価格が低下した。その後、11月以降になると、堂島コメ先物価格は、毎月公表される「相対取引価格」に概ね連動して推移した。一方、「全POS取引平均価格」は、2024年8月以降高騰し続けている。先物価格と「相対取引価格」とは相関関係があるが、全POS取引平均価格とは乖離している。
3.随意契約備蓄米放出後の堂島コメ平均価格
随意契約備蓄米の放出と販売が開始され、さらに、追加の放出が決定された。その後の米の小売価格、相対取引価格は、さらに令和7年産の出来秋価格が注目される。堂島の先物取引価格の推移をみると、将来価格の先取りをする動きがみられる。随意契約備蓄米の販売が開始された6月1日から2週の間に10月限が1,750~1,800円の低下、12月限が1,400円の低下となった。2週の間には、ストップ安の日もあり、今後の取引価格の動向が注目される。JA等の令和7年産の概算金は、高値で最低補償と公表されている。しかし、主食用米の作付面積増、備蓄米の放出等により、令和7年産の米需給及び価格動向は、不透明になっている。随意契約備蓄米放出後の堂島の先物価格の推移をみると、令和7年産米の将来価格の先行指標の形成となる可能性もある。今後の堂島の10月限、12限価格の推移、出来高の動きが注目される。とくに、JAの概算金が高値で公表されており、従来は概算金価格が出来秋の産地価格に影響を与えているため、堂島の先物価格(10月限、12月限、2月限)を生産者や流通業者がリスクヘッジとして活用できる可能性もある。
4.堂島コメ平均の今後の課題
しかし、リスクヘッジとして、堂島コメ平均指数を活用するには、幾つかの課題がある。まず、堂島コメ平均指数は、指数取引のため、最終的には差金決済であり、生産者・流通業者となじみがない。また、堂島コメ平均では、指数現物市場(みらい米市場)が制度化されているものの、コメ不足により、現物市場が賑わなく、現先連携の稼働実績がない点である。
さらに、堂島コメ平均価格と各産地・銘柄との格差も明確となっていない。
以上の諸点のため、生産者、流通業者が堂島先物取引を活用してリスクヘッジの取引に参加するには課題がある。堂島コメ平均の活用についての関係業者への周知と共に現先連携を含む活用促進の体制の整備と堂島平均価格と現物取引価格との格差の明確化が、堂島コメ平均の活性化に必要であり、2年目を迎えての課題となっている。