2025年8月31日 : 第270・271集:富山県の集落営農の現段階的性格
■発行日:2025(令和7)年8月31日
■編著:農政調査委員会
■在庫:あり
■ページ数:p.162
■目次:
- 第1章 富山県集落営農に関する政策課題(富山大学名誉教授 酒井富夫)
- 第2章 富山県における集落営農組織の変遷と将来への再構築(富山県新川農林振興センター 池田太)
- 第3章 富山県の農業経営法人化の効果と集落営農の現状(富山県農林水産部農業経営課 中村一要)
- 第4章 富山県の集落営農の人手不足をめぐる状況(農林中金総合研究所 石田一喜)
- 第5章 富山県における集落営農の後継者問題(農政調査委員会・宇都宮大学学術院 小川真如)
- コメント (東京大学大学院農学生命科学研究科 安藤光義)
■「あとがき」より:
富山県では、集落営農支援促進(1982年)、集落営農育成事業(1988年)をはじめ1980年代から集落営農の育成が進められてきた。また、同時に、その持続性や発展性のあり方について論じられてきた。
本書は、富山県の集落営農の現段階的性格をテーマに、著者各自の問題意識に沿って自由に論考してもらい、これをとりまとめたものである。
第1章「富山県集落営農に関する政策課題」(酒井富夫)では、あるべき集落営農の姿を考察し、その打開方法について検討を行っている。
第2章「富山県における集落営農組織の変遷と将来への再構築」(池田太)は、集落営農のねらいと現状の差異に着目しながら、事例分析や、今後の展開を考察している。
第3章「富山県の農業経営法人化の効果と集落営農の現状」(中村一要)では、富山県における集落営農の今後の方向性を見出すことを目的に、県外事例の分析や富山県内の現状を分析して、富山県における集落営農の今後の方向性を提起している。
なお、第2章と第3章は、集落営農に携わる富山県職員による論考である。また、第3章は、政策研究大学院大学政策研究科の修士論文である中村一要(2023)「富山県における農業経営 の法人化の効果―地域農業維持のために―」をベースにしたものである。
第4章「富山県の集落営農の人手不足をめぐる状況」(石田一喜)では、人口の変化とそれにともなう集落・家の変化に着目しながら、富山県の集落営農組織が存立する地域の実情と展開の方向性を論考している。
第5章「富山県における集落営農の後継者問題」(小川真如)では、アンケート調査に基づき、集落ごとに形成されている傾向が強い富山県の集落営農において、作業内容に着目しながら後継者問題の特徴を析出している。富山県の多くの集落営農が、農業従事者の高齢化・労働力不足、生産コストの増大などに直面する中、富山県においては集落営農をめぐる検討・議論が進んでいる。
たとえば南砺市で2023年6月に第1回「集落営農再生塾」が開講され、2024年度には「産業政策」の観点からのみならず、地域の存続を目的とした「地域政策」の視点も加え、総合的な視野からも議論が展開された。
富山県の集落営農の将来展望は、多様な切り口からのアプローチによって検討・議論することができ、その検討・議論の興隆や、その知見を踏まえた交流を促進することが、直面する課題を乗り越えるための重要な鍵となる。著者ごとの多様な問題意識から富山県の集落営農の現段階的性格に迫った本書が、富山県の集落営農の今後を検討・議論する際の起点の一つとして貢献できれば幸甚である。
酒井 富夫(富山大学名誉教授)
小川 真如(農政調査委員会、宇都宮大学学術院)