のびゆく農業:No.1004:変動する中国の豚肉業界
■原題:
・Fred Gale, Daniel Marti, Dinghuan Hu : “China’s Volatile Pork Industry”
■発行:2012年9月15日
■解題:三石 誠司→解題等(PDF)を読む(本編の一部を無料でご覧頂けます)
■翻訳:三石 誠司
■対象:中国・アメリカ
■ページ数:50p.
■在庫:あり
■目次:
- 解題…2
- 変動する中国の豚肉業界…6
- イントロダクション …6
- 国内マーケットの変動とリンクして増加する中国の豚肉輸入動向…7
- 上昇する中国産豚肉の価格とコスト…11
- 中国の豚肉マーケットの周期性…18
- ホッグ・サイクル安定化を意図した中国の政策…24
- 豚肉マーケットに影響を及ぼす疾病の流行…35
- 環境面および食の安全面からの圧力…39
- 将来を見据えて…42
■解題より:
本稿は、2012年2月に米国農務省経済調査局(USDA-ERS)のフレッド・ゲール(Fred Gale)他により作成された報告書、『China’s Volatile Pork Industry』の全訳である。
中国は今や米国にとってあらゆる面で無視できない存在だが、著者のゲール等には、それでもまだ米国の農家やビジネス・リーダー、そして政策担当者にとってさえ、中国という国の持つ「奥の深さ」が十分に理解しきれていないといういらだちのようなものが感じられる。特に米国産豚肉の潜在的な輸出先として「ほぼ無限(almost incomprehensible)」とまで言われていながら、実際の貿易という面では様々な障害に直面している現状を、少しでも改善したいという思いが伝わってくる。こうした障害には、中国の国内の豚や豚肉価格の変動だけでなく、小規模農家による“裏庭”養豚という生産の実態に加え、頻発する疾病や何よりも飼養頭数そのものが年により大きく変動し、そこに中国当局の政策介入が加わり複雑さを増していることにも原因がある。その結果、一見、米国は「東洋の神秘」に翻弄されているかのような趣すらある。
しかしながら、本文中にもあるように、中国当局は豚肉産業におけるこうした伝統的構造を「近代的な」畜産部門に転換するために様々な施策を実施している。残念ながら、本報告書を見る限り、それらの全てが上手く機能しているとは言えないが、ゲール等がこの報告書で述べている内容は、途上国に対する米国の市場開拓と農産物輸出がどのような形で行われるかという手法について、豚肉を例に、ある国にとって不可欠な農畜産物や食品を米国が販売しようとするときに、どのような分析と手法を行うかという点で、非常に示唆に富んだ内容となっている。何故ならば、我々の多くが既にコメや牛肉、果実類を外国から受け入れてきており、それを所与のものとして受け止める世代が増加する中で、風化されつつある前段階の記憶と留意点を明確に示しているからである。
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