のびゆく農業:No.1013:ルーラルプルーフィングとは何かー英国の農村政策の手法ー
■原題:
・Jane Atterton(2008), Rural Proofing in England: A Formal Commitment in Need of Review, Centre for Rural Economy Discussion Paper Series No.20, University of Newcastle upon Tyne
■発行:2013年12月10日
■解題:安藤 光義→解題等(PDF)を読む(本編の一部を無料でご覧頂けます)
■翻訳:安藤 光義
■対象:イギリス
■ページ数:34p.
■在庫:あり
■目次:
- 解題…2
- イングランドにおけるルーラルプルーフィング-要請に基づく公的な再検討-…9
- 要約…9
- 1. はじめに…10
- 2. ルーラルプルーフィングとは何か…11
- 3. どのようにして政策のルーラルプルーフが行われるか…13
- 4. 誰がルーラルプルーフィングを行うのか…15
- 5. 2000年以降に何が達成されてきたか…17
- 6. ルーラルプルーフィングの今後…22
■解題より:
「ルーラルプルーフィングRural Proofing」とは日本では聞きなれない言葉だが、英国では定着した農村政策の手法である。字義通り訳せば「農村に防水加工を施す」ということになるが、農村の地理的・社会的特殊性によって政策が効果を発揮しないことがないように、農村の視点から政策を検査するという意味である。ここでいう農村政策rural policyとは農業政策に限定されるものではなく、産業面では1次産業以外の産業を含む地域経済を対象とした幅広い政策である。それ以上に農村地域に暮らす人々を対象とした政策であり、かなりの部分は社会政策の範疇に属するものである。この点は日本の農村政策のイメージと大きく異なるので最初に注意しておきたい。
ルーラルプルーフィングは1997年に政権を奪取したニューレイバーが用意した政策であり、2000年の農村白書Rural White Paperに登場する。労働党は本質的には都市政党であるが、1997年の総選挙において農村地域でも勝利を収めたため、この農村地域の選挙民のための政策を講じる必要があった。そこで打ち出されたロジックは、農村問題は農村固有の問題ではなく一般的な問題であり、都市で生じている問題と本質的な差はなく、農村の地理的・社会的特殊性によって問題は多様なあらわれ方をしているにすぎないというものであった。農村問題の領域を拡張することで、実際、求められている政策ニーズに応えるとともに、労働党の得意とする領域を農村政策に持ち込んだのである(注1)。それは次のような政策の理解の仕方にも繋がる。つまり、農村固有の問題と思われている問題も、政策策定者が農村の事情を十分理解すれば、一般的な政策で十分対応することができるのであり、そうした配慮を行うことができる資質が官僚には求められるということである(注2)。そのための手法がルーラルプルーフィングである。これは2000年の農村白書では「13. thinking rural」という項目の中で記されている。そこでの問題認識は以下のようなものである。」
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