のびゆく農業:No.1011-1012:新しい直接支払制度へ-将来のCAPにおける政策対象の限定と再分配-
■原題:
・Alan Swinbank, New Direct Payments Scheme: Targeting and Redistribution in the Future CAP. PE 474.528, Directorate General for Internal Policies, European Parliament, Brussels.
→原文PDF掲載サイト(PDFファイルに直接リンクしています)
■発行:2013年9月30日
■解題:西川 邦夫→解題等(PDF)を読む(本編の一部を無料でご覧頂けます)
■翻訳:西川 邦夫
■対象:EU
■ページ数:75p.
■在庫:あり
■目次:
- 解題…2
- 新しい直接支払制度へ
-将来のCAPにおける政策対象の限界と再配分-…12 - 1. はじめに…12
- 2. 損失補償から所得支持へ…13
- 3. 直接支払いの影響とは?-1つの思考実験-…20
- 4. 直接支払いは何のために?…24
- 5. ヨーロッパ委員会の提案-1つの批判-…33
- 6. WTOによる制約…49
- 7. 結論と勧告…64
■解題より:
本訳は、Alan Swinbank, New Direct Payments Scheme: Targeting and Redistribution in the Future CAP. PE 474.528, Directorate General for Internal Policies, European Parliament, Brussels. の日本語訳である。本訳では紙幅の関係上、原文中の図、表、囲み記事、付録を収録することができなかった。興味のある方は、原文が掲載されている以下のインターネットサイトを参照されたい。
http://www.europarl.europa.eu/committees/en/studiesdownload.html?languageDocument=EN&file=74971
1.SwinbankとCAP改革
本論文は、イギリスのレディング大学名誉教授であるAlan Swinbankが、ヨーロッパ議会農業・農村振興委員会 (COMAGRI) の依頼に応じて、2013年以降のCAP (post-2013 CAP) についてのヨーロッパ委員会 (European Commission) の提案を詳しく検討したものである。SwinbankはヨーロッパにおけるCAP改革研究の第一人者であり、我が国では直接支払の証券化(いわゆる、ボンド・スキーム (Bond Scheme) )の共同提唱者として知られている注1)。その立場は、GATTウルグアイ・ラウンド及びWTOドーハ・ラウンドの交渉過程から形成された国際規律(WTO原則)を重視し、CAPをそれに適合させる形で改革するというものである。現行の直接支払(第1の柱、Pillar 1)は徹底的に生産から切り離され (decoupled) 、段階的に廃止される。そして浮いた財源は、より政策対象の限定が可能な農村振興政策予算(第2の柱、Pillar 2)へと振り向けられる。その結果、CAPは生産及び貿易歪曲的効果を失い、WTO原則に合致する。安藤光義は、このようなSwinbankの立場を「外圧派」と規定し、徹底的なCAP自由化論者の代表格としたのだった注2)。
2013年以降のCAPについては、我が国でもこれまでに多くの紹介がされている注3)。そして、CAPが農業・農村の多面的機能を中心とした公共財の供給重視へと大きく転換を遂げようとしていることについては、各論者が一致するところである。・・・
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