現地農業情報-農:No.291:離島の活性化と社会関係資本
■発行日:2013年9月30日
■報告:高篠 仁奈(東北大学大学院農学研究科 助教)
■コメント:小澤 卓(公益財団法人 日本離島センター)
■ページ数:59p.
■在庫:あり
- 構成
- 1.はじめに
- 2.離島における過疎化の現況
- 3.調査地の概要と分析視点
- 4.移住者の社会関係資本
- 5.観光振興とネットワーク形成
- 6.結び
- ≪私のコメント≫
■【問題の所在】より:
離島は,国土や自然環境の保全において重要な役割を持つ。しかし,離島における若年層の流出・高齢化は,本土の条件不利地域と比較しても急速に進んでおり,地理的及び自然的特性を生かした離島振興は極めて重要な課題となっている。
昭和28年に離島振興法が制定されて以来,離島地域では,国・地方自治体が振興施策を実施し,一定の成果をあげてきた。従来の支援は,道路・港湾整備などのハード事業中心であったが,平成24年の離島振興法の改正では,離島の振興の方向として,離島の実情にあった各種ソフト事業の充実を図るための抜本的な改正が行われた。これにより,新たに「離島活性化交付金」を創設するなど,きめ細やかなソフト事業も財政支援の対象となり,離島の多様性に応じた施策が期待されている。このような動きの中,ソフト施策の効果を上げるような社会関係資本(信頼や規範,ネットワーク)を摘出し,その効率的形成に寄与するため,離島の活性化という文脈における「社会関係資本」の研究が求められている。
本稿では,離島の振興に寄与する研究を行うため,長崎県の五島市を事例とした調査研究を行う。事例分析では, IターンやUターンなどの移住促進政策と観光振興策を取り上げる。その際,五島市の事例について実態把握を行うとともに,離島振興における社会関係資本について,振興施策の効果を上げるような社会関係資本を特定化し,その活用と醸成の方策について示唆を得ることを目指す。