米産業・米市場取引に関する情報:その3(令和7年11月6日)
1.不透明な需給・価格動向
(1)農水省主食用米等(令和7/8年)の需給見通し
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(出典:農林水産省)
変更のポイント
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(出典:農林水産省)
(2)主食用米の需給動向について
現状判断DIは54で8月にくらべて4ポイント減と「やや減少」となった。8月は7月より7ポイント増加し、需給が締まっているとの見方がやや強まったが、再び減少した。 向こう3か月の見通し判断DIは45で8月より8ポイント減と「大幅に減少」。
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(出典:(公社)米穀安定供給確保支援機構)
主食用米の米価水準の現状判断DIは91で8月より6ポイント増となった。一方、向こう3か月の見通し判断は57で前月より12ポイント減と「大幅に減少」となった。
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(出典:(公社)米穀安定供給確保支援機構)
判断を行うに当たり考慮した要因でもっとも多いのは「米穀の調達状況」で51%と前月とほぼ同水準だが、次いで「国内の在庫水準」が23%と前月の15%から増えた。
(3)JAの概算金と相対取引価格
①JA概算金
7年産JA概算金は,6年産と比べて,ほとんどの県で1万円以上上昇し,60㎏当たり3万円前後となっている。北海道,東北,新潟では3万~3万3千円となっている。
25,000円未満 千葉あきたこまち、ふさおとめ、高知コシヒカリ、新潟たがね錦24,200~6,000円 25,000円 石川コシヒカリ、千葉コシヒカリ、新潟五百万石 26,000円 富山コシヒカリ、広島、香川コシヒカリ 27,000円 ●岐阜コシヒカリ、長野美山錦、岡山もち27,600円 28,000円 きらら397、●福島中通,浜通り、●茨城あきたこまち、長野コシヒカリ、福井はなえちぜん、長野コシヒカリ、愛知コシヒカリ、島根コシヒカリ(買取)、富山もち 29,000円 ななつぼし、福井コシヒカリ、●三重コシヒカリ、●岐阜ハツシモ、滋賀コシヒカリ、大分ヒノヒカリ・コシヒカリ、佐賀さがびより、埼玉はくさいコシヒカリ、滋賀コシヒカリ・みずかがみ、富山酒米 30,000円 ゆめぴりか、●青森まっしぐら、●秋田あきたこまち、●山形はえぬき、●福島会津、●茨城コシヒカリ、岡山コシヒカリ 31,000円 ●岩手、宮城ひとめぼれ、●栃木コシヒカリ、福岡JAゆめつくし31,920円、宮城もち31,500円 32,000円 岩手ヒメノモチ,茨城コシヒカリJA買取32,500円、熊本JA鹿本ヒノヒカリ32,520円、宮崎早期コシヒカリ 33,000円 ●新潟一般コシヒカリ、●山形つや姫、茨城JA買取あきたこまち、熊本阿蘇33,240円 34,000円 ●新潟新之助、茨城JA34,000円 35,000円 ●魚沼コシヒカリ,新潟わたぼうし 36,000円 37,000円 新潟こがねもち 38,000円 39,000円
②9月相対取引価格と前年比の価格,数量
JAの9月相対取引価格は前年比163%、14,195円高と過去最高であるが,取引数量は前年比64%と大幅に減少している。相対取引価格が大幅に上昇したのは,JA概算金が大幅に影響している。同時に、産地での集荷価格が高値なため、スーパー等の小売り価格が高止まりになっていることか影響している。
銘柄 7年産概算金(円) 前年比(円) 7年9月相対取引価格(円) 前年比、価格、数量 ななつぼし 29,000 12,400 36,540 11,342 (145%、66%) ゆめびりか 30,000 12,500 37,701 11,730 (145%、54%) 宮城ひとめぼれ 31,000 14,500 37,244 14,276 (162%、77%) 秋田あきたこまち 30,000 13,200 38,631 16,347 (173%、51%) 山形つや姫 33,000 11,500 39,754 16,658 (172%、65%) 福島コシヒカリ 28,000 9,500 35,643 11,495 (148%、191%) 茨城コシヒカリ 32,500 10,000 38,130 10,484 (138%、40%) 千葉コシヒカリ 25,000 9,000 37,142 12,586 (151%、74%) 千葉ふさこがね 23,500 9,000 34,254 10,557 (145%、188%) 新潟コシヒカリ 33,000 12,000 38,613 17,755 (185%、107%) 新潟こしいぶき 30,000 13,000 34,792 15,717 (182%、15%) 富山コシヒカリ 26,000 5,900 36,185 15,741 (177%、71%) 岐阜コシヒカリ 29,000 12,400 39,324 18,224 (186%、41%) 兵庫コシヒカリ 26,300 10,500 41,256 17,240 (184%、61%) 滋賀コシヒカリ 29,000 9,000 34,927 14,071 (167%、62%) 滋賀みずかがみ 28,000 9,000 35,293 14,381 (169%、93%) 島根きぬむすめ 22,000 10,400 34,249 14,833 (176%、32%) 島根コシヒカリ 28,400 11,600 36,249 15,883 (176%、44%) 平均 36,895 14,195 (163%、64%)
(4)スーパーの販売価格―依然としてスーパーでの価格は高止まり
最新の日次データ(10月28日時点)でみると、平均4,129円、銘柄米4,725円、 ブレンド米3,753円、随意契約備蓄米は1,992円。(いずれも5kg当たり)
銘柄米、ブレンド米は、一定の幅での日次の価格変動があるなかで、随意契約による政府備蓄米 を活用した商品は、概ね2,000 円/5kg前後の価格で推移。
令和7年10月20日の週の平均価格は、前週の4,251円/5kgから43円低下し、4,208円/5kg。(対前年同期+22.8%、前週比▲1.0%。2週ぶりの低下。)
平均価格については、令和7年6月以降、随意契約による政府備蓄米の流通により低下。8月以降は新米の出回りや随契備 蓄米の販売がピーク時に比べ減少したことを背景に上昇した後、横ばいで推移。
販売数量については、令和7年6月、7月は前年を上回る水準で推移し、8月以降はピーク時に比べ低い水準が継続。
※ 日経POS情報を用いた株式会社ナウキャストの分析による。全国約1,200店舗のスーパーから購入したPOSデータに基づくもの
(5)10月の現物取引は前年比取引数量の増大(前年比234%)、取引価格も下落傾向にある。昨年同期比と比べると8,000~9,000円程度高くなっているが、JA概算金の上昇率より低い。3月末と比べ1万円以上安くなっている。落札価格は下値の「呼び唱え」とほぼ同じ水準となっている。-10月クリスタルライス
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(出典:農業協同組合新聞)
売り唱え(円) 3月下期%、円 前年同期比 北海道ゆめぴりか 36,250 36,160~7,410 27.1%安 13,488 33.0%高 8,997 北海道ななつぼし 35,050 29.6%高 8,012 青森まっしぐら 34,300 27.4%安 12,964 31.5%高 8,225 宮城ひとめぼれ 34,917 34,260~6,710 32.2%高 8,506 関東コシヒカリ 34,696 茨城 33,410~5,910 7月下期 12.8%高,3,937 31.1%高 8,240 関東あきたこまち 33,878 27.1%安 12,610 29.0%高 7,611 関東銘柄米 32,829 千葉ふさおとめ 33,360 6月上期 19.1%安,7,748 27.8%高 7,132
2.価格高騰により米消費量減少と買い控えの進展
(1)1人1カ月当たりの米消費量は3月以降6月連続減少。外食昨年12月以降,9カ月連続,家庭内消費も5カ月連続。
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(出典:日本米穀物検定協会)
(2)農水省は、10月17日に米消費量が若年層より高齢層で減少している調査結果を公表した。厚生労働省の調査によると米や米加工品の一人1日当たり2023年で296gであるが、20代が319g、60代は289gであり、01年から20年の減少率は20代が8%,60代が25%である。60代の主食の年間支出金額のうち米の割合は、2000年で37%、2024年で17%に低下。弁当、おにぎり、即席めん、パスタの割合が高まっている。
(3)26%が米「買い控え」 米価上昇が家計に影響 住友生命「台所事情」アンケート
物価上昇が家計に与える影響などを調べた住友生命によるアンケートで、米の「買い控え」傾向が浮かんだ。2025年の「令和の米騒動」によって、米の購入を控えたことがある人が26.4%、売り切れで買えなかったことがある人が23.9%にのぼった。
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(出典:住友生命ニュースリリース「スミセイ『わが家の台所事情アンケート』2025」)
物価上昇、82.9%の家計「直撃」
住友生命は9月4~8日、インターネットを使い、全国の20~60代の会社員男女5,484人にアンケートを実施した。
物価上昇の家計への影響は、82.9%が「ある」と答え、影響があった費目は、「食費」91.3%、「電気代」61.5%、「日用品費」45.8%だった(複数回答可)。1カ月当たりの生活費の増減は平均9,636円に及んだ。
「米騒動」で買い控え、備蓄米購入は20.3%
「2025年の『令和の米騒動』によって、米の購買行動に変化はありましたか」という質問に対しては、「家庭用米の価格が高すぎて購入を控えたときがあった」26.4%、「家庭用米が売り切れていて購入できないときがあった」が23.9%にのぼった。「家族が食べたい量のお米を確保できない時期があった」という回答も5.6%あった。備蓄米を買ったことがある人は20.3%だった。
「適正価格」平均は2709円
「あなたが適正だと思う5kgの家庭用米(備蓄米を除く)の価格」についての質問には、2,000円以下が34.0%、2,500~3,000円が28.1%、2,000~2,500円が16.7%で、平均は2,709円。4000円を超える米価を「適正」とする回答は4.1%にとどまった。
物価上昇の影響を受けている家庭の75.6%が家計を切り詰めており、削減・節約に取り組んだ費目は、トップが「食費」で49.2%。その後、「被服費」25.6%、「趣味費」24.8%と続いた。
米穀機構による米消費動向調査でも、1人1カ月当たり精米消費量が6カ月にわたって前年同月割れを続けているが、米価上昇が米消費を抑制していることが今回の調査でも浮き彫りになった。
(4)米の価格が高騰した場合、どのように対応しますか?(ヤフーのアンケート)
投票数:2,603票
- 安い米を選ぶ45%
- 特に何もしない19.3%
- 他の主食に切り替える19%
- 米の購入量を減らす15.3%
3.生産者、JA、集荷業者、流通業者への適正な生産者・消費者価格
集荷・販売価格 適正な生産者米価(60㎏当) 適正な消費者米価(5㎏当) その他の米 生産者① 33,000円(コシヒカリ精米5㎏3,800円) 25,000円(10a20万円) 3,500~4,000円 生産者② 概算金30,000円/集荷価格34,000円/販売価格36,000円 24,000円 2,500~3,000円 酒造好適米26,000円 生産者③ 25,000円 3,000円 生産・集荷・販売 35,000円(販売35,300円) JA① あきたこまち30,000円/商系35,000円 25,000円 3,500円 酒造好適米30,000円/もち米45,000円 JA② 33,000円 28,000円 700円/1kg JA③ コシヒカリ33,000円 23,000円 3,500円 加工うるち19,300円/加工もち23,300円/輸出用米15,400円/酒造好適米24,000円/作付減/もち米37,000円 集荷販売① 概算金30,000円/集荷33,000円/販売35,000円 28,000円 2,800円 加工用米23,300円/輸出用15,000円/もち米34,000円 集荷販売② 集荷価格32,000円 22,000~25,000円 2,980円 輸出米11,000円/もち米39,000円 集荷販売③ 集荷価格33,000円 23,000円 3,300~3,500円 流通・販売① 33,000~38,000円 25,000円 500円/1kg 流通・販売② 25,000円 3,500円 流通・販売③ 35,000~38,000円 26,000~28,000円 2,980円 流通・販売④ 31,000円以上 25,000円 量販店700円/1kg/業務用600円/1kg その他 32,000円
- 生産者①:所得補償を導入し,生産者にも消費者・米加工業者にもメリットある政策。
- 生産者②:所得補償を導入し,生産者にも消費者・米加工業者にもメリットある政策。
価格低下へのセーフティネット,市場の確立,米輸出への支援 - 生産者③:市場価格の介入はだめ。所得補償は10a27万円,中山間地域では必要
- JA①:透明性のある米市場
- JA②:米菓・酒造業者への支援策の充実
- JA③:水田活用米穀に対する支援強化
- 集荷・販売①:輸出拡大の支援策が不明確
- 集荷・販売②:価格低下のセーフティネット
4.食料自給率 4年連続38%で足踏み 主食用米消費増も小麦生産減 24年度
農水省は10月10日、2024年度の食料自給率を公表した。カロリーベースの自給率は前年並みで4年連続の38%となった。生産額ベースの自給率は前年度より3ポイント高い64%、今年度から新たに加えた摂取熱量ベースの自給率は前年より1ポイント高い46%となった。
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(出典:JAcom農業協同組合新聞)
上昇要因は主食用米の消費量が1人あたり50.3kgから53.4kgに6%増加し、0.5ポイント寄与した。砂糖類も国産てん菜・さとうきびの産糖量が54万tから67万tに25%増加し、0.5ポイント寄与した。
マイナス要因は、小麦の単収減で生産量が109万tから103万tへと6%減少して0.4ポイント、大豆も生産量が3%減、野菜も4%減、魚介類も4%減となり、それぞれ0.1ポイントのマイナス要因となった。
生産額ベースの食料自給率は、国内生産額の増加により前年度比3ポイント高い64%となった。その要因は農産物価格の上昇である。国産米の単価が64%上昇して2.5ポイント寄与した。農水省では「これだけ急激な上昇は近年にはなく異例」としている。野菜も国産単価が19%上昇して0.5ポイント、畜産物も国産豚肉の単価が9%上昇するなど国内生産額が上昇して0.4ポイント寄与した。
マイナス要因は、魚介類の国内生産額が4%減少して0.3ポイント、その他はカカオ豆の輸入単価が140%上昇して輸入額が増加したことで0.2ポイントのマイナス要因となった。
5.我が国と諸外国の食料自給率(試算)
また、2020年3月策定の基本計画で、飼料が国産か輸入かにかかわらず、畜産業の生産力を評価するために設定された、食料国産率は、カロリーベースが前年並みの47%、生産額ベースは2ポイント上昇して69%となった。飼料自給率は1ポイント低下して26%となった。
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(出典:農林水産省)
