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米産業・米市場取引に関する情報:その2(令和7年9月1日)

米産業・米市場取引に関する情報:その2(PDF版)

 

 今年度より、米産業・米市場取引及び米政策が変化する状況のもとで、米産業・米市場取引に関する情報を定期的に提供します。この情報が米産業関係者の参考になれば、幸甚です。今回は2回目となります。

米産業・米市場取引に関する懇話会事務局((一財)農政調査委員会)

 

1.水稲予想収穫量と作柄

農林水産省 25年産米収量、13府県増加見込み 農水省「生産、おおむね良好」

時事通信 経済部2025年08月29日19時46分配信

 農林水産省は29日、2025年産米の10アール当たりの収量について、静岡など13府県が前年を上回る見込みであると発表。29都道府県は前年並み、4県は前年を下回る見通し。前年を「やや下回る」見通しとなったのは、岩手、宮城、秋田、千葉の4県。だ。同省が15日時点で、降水量や気温、日照時間などに基づき予測した。一部地域で渇水や高温などの影響が見られるものの、生産は「おおむね良好」と分析した。

 ただ、全国的に15日の調査以降も高温傾向が続き、収量低下を招くイネカメムシを含む「斑点米カメムシ類」の発生が予想され、収量の動向は依然不透明だ。

 

②米穀データーバンク 7月31日現在、水稲予想収穫(1.7㎜)、548㎏、747万t(67万8000t増)、作況102

参考 各都道府県の主食用米等の作付意向  令和6年産実績と比較すると、全国的に主食用米の作付けが増加しています(131.7万ha)。  さらに、令和7年産米の備蓄米買入入札を当面中止していることから、主食用米及び備蓄米(1.7万ha)を合わせて133.4万ha(対前t年7.5万ha増)となります。これは、平年単収(539kg/10a)で生産量を計算すると、719万トン(対前年40万トン増)に相当します。 719万トン(対前年40万トン増)は、過去5年間で最大の生産量となる見込みであるとともに、増加の伸びも主食用米の生産量の調査を開始した平成16年産以降、最大となる見込みです。    詳細は前回

 

農水省 早期栽培のコメ収穫量3県で去年を「やや上回る」見通し2025年8月1日

農林水産省は、「西南暖地」と呼ばれる徳島、高知、宮崎、鹿児島、それに沖縄の5つの県で早期栽培米の毎年7月15日時点の収穫量の見込み 徳島、宮崎、鹿児島の3つの県で日照時間が長かったことなどから、去年を「やや上回る」という見通し。一方、沖縄県は4月から5月にかけて気温が低かったため、去年を「やや下回る」。高知県は「去年並み」。5つの県で早期栽培米の量は、去年産で1%余り。

 

早期栽培米 収量まずまず 品質は高温障害の懸念も 農業協同組合新聞西南暖地JA緊急調査2025年8月28日

本紙は西南暖地の早期栽培米の作柄見込みや集出荷状況などについて、徳島県、高知県、宮崎県、鹿児島県のJAの米担当者に緊急に聞き取り調査。一部地域で収量の低下を懸念する声も聞かれたが、概ね収量は前年並み、または増加の見込み。

 

⑤岩手県 8月29日に県やJAの担当者ら約80人が出席。県内12農業用ダムについては、8月上旬のまとまった雨で盛岡地域などで水位が改善。8月29日午前9時時点で、農業用水の取水を停止・制限している主なダムは、奥州市の胆沢ダムと花巻市の豊沢ダムです。 貯水率は胆沢ダムが4.7%、豊沢ダムが5%。

こうした渇水の影響でコメの生育状況において、一部のほ場で稲の葉先が枯れるなどの異常が確認された。 また高温によりコメの食味の低下も懸念される。

 

⑥JA福井県五連の宮田会長は、27日の記者会見で「一部の地域では稲が枯れるなどしたものの、ほかの県と比べて影響は限定的で、現時点では収量は例年並みとみられる。」と述べました。一方、これから本格的に収穫が始まる主力のコシヒカリについては、暑さの影響を受けやすい品種のため「品質面などで不安がある」と懸念を示しました。JA福井県五連は、コシヒカリの新米の価格が5キロあたり4,000円以上になると見込まれる。

 

2.米消費動向-3月以降、米消費と大幅に減少、小売価格は反転

① 米穀機構調査によると、1人1月当たり精米消費量は、前年比では3月の1.1%減を境に減少に転じ、10%前後(とくに家庭内消費は10%強)の大幅減である。

 また、購入先ではスーパー55%前後で前年比5%増であり、インターネットショップが6月、7月で13%と大幅増である。 

 家庭での購入数量をみると、米の消費量は前年比を下回っているが、麺類は10%前後増加しており、米から麺類への移行がみられる。

 

家庭での購入数量

  

②コメ小売価格

 

3.各県JA全農・JAの概算金、買取価格

 各県の概算金は25,000~32,000円(昨年と比較して10,000~15,000円前後高い)と高水準であり、さらに最低保証や契約栽培、複数年契約の例がある。

 

各県JA等の概算金

20,000円

 

21,000円

山口

22,000円

鳥取(生産費)福岡京築

23,000円

岩手ヒトメボレ、埼玉、愛知JA下限価格、三重

24,000円

越前たけふ(精算3,000~5,000円)滋賀JAみずかがみ、新潟五百万石、たがね錦

25,000円

岩手あきたこまち、会津よつば 石川コシヒカリ25,200円

26,000円

青森まっしぐら、北つくば26,000円、買取、富山コシヒカリ、三重コシヒカリ農協買取

27,000円

 

28,000円

かかやき最低保証、きらら397 28,500円、山形はえぬき、岩手、宮城ヒトメボレ、長野コシヒカリ28,240円

福井ハナエチゼン、栃木コシヒカリ、島根コシヒカリ(買取)28,400円、

新潟わたぼうし28,500円、富山もち

29,000円

ななつぼし、JA福井コシヒカリ、富山酒米 島根つや姫29,200円 

30,000円

ゆめぴりか、青森青天の霹靂、秋田あきたこまち28,300円、追加払込み30,000円 茨城、新潟コシヒカリ

30,500円

新潟こがねもち

31,000円

新潟新之助 山形つや姫

31,500円

宮城もち

32,000円

岩手ヒメノモチ

32,500円

新潟魚沼コシヒカリ

参考 7月に民間貿易で輸入される米の量は過去最多の26,397tであった。1~7月では67,000tであり、24年同期比の130倍以上。国内で流通する価格は㎏当たり600円前後、5㎏当たり3,000円前後である。同700~800円前後の国産米と比べて安い。さらにSBS米が60,000t前後であり、5㎏当たり2,000円で流通する(日本農業新聞8月26日)

 

②JA買取価格や継約栽培米などは1,000~2,000円を上回っている。一方、加工用米が19,000円、輸出用米は1,5000~17,000円となり、その流通、需要確保が課題となっている。

 

コメの「産地直接取引会」 一般コシヒカリ32,140円、JAえちご中越が初実施 JA全農県本部の仮渡し金上回る

生産者はフレコンバッグ(1袋1,020キロ)12袋分(12,240キロ)を1口とし、参加する。生産者が付けた値段を上回り、かつその値段に近い金額を提示した業者を 順に同JAがマッチングする。

 生産者は自身が提示した額を受け取る。同JAは生産者から60キロ当たり手数料1,500円を受け取る。生産者や業者の要望に応じ、集荷や保管を行う。業者が生産者の提示額より高く支払った分は、同JAの共同計算に組み入れて委託販売の最終精算の原資にし、他の組合員に分配する。取引会に参加できるのは大規模の組合員に限られることから、中小規模の組合員との公平性を担保する

生産者は46経営体、買い手は15社が参加。生産者は計991トン出品し、買い手側の申込数量は計4,394トンと出品総量の4.4倍で、卸売業者のコメの獲得意欲が高いことがうかがえた。

③その他の事例

JA東川農協買取価格:ゆめぴりか32,400円、 ななつぼし31,428円、加工用うるち米19,116円、輸出米17,500円

JAえちご上越仮渡金:コシヒカリ30,000円、継約栽培米31,000円、五百万石24,000円、こがねもち30,500円、わたぼうし28,500円 

新潟加工用:うるち米19,300円、もち米23,300円、輸出米15,400円、飛騨コシヒカリ30,000円 

JA晴れの山岡山:コシヒカリ30,000円

 

④早期米の価格水準の動向

千葉農協:コシヒカリ25,172円、25,000円、25,040円

改定①千葉農協:コシヒカリ32,070円、あきたこまち、ふさおとめ30,070円、ヒメノもち33,570円 ②千葉農協:コシヒカリ28,500円、ふさおとめ27,000円

茨城JA稲敷:買取価格 JAあきたこまち32,500円、一般31,900円

関西米穀市場:茨城コシヒカリ20,800円、富山コシヒカリ(九州着)30,500円

鹿児島県の複数のJAは、早期米を27,000~28,000円を提示(前年比8,000~9,000円高)

収穫が始まった茨城あきたこまちは昨年より半俵落ちで、集荷価格は32,000円とのこと。

愛知コシヒカリ相対取引価格31,100円

 

⑤クリスタルライスの商品一覧

2025年産の販売提示額平均 35,000円弱で前回7月24日1割上昇、北海道ゆめぴりか35,000~39,000円、秋田あきたこまち35,000~38,000円、千葉ふさおとめ33,000円。

 

4.価格、需給動向をみると、米穀機構の景況調査では需給・価格とも7月は6月に比べ改善したが、基準を下回っていた。堂島コメ平均は、需要の上触れの発表とJA概算金の上昇を受け、10月限、12月限、2月限が30,000円を超える水準となり、JA概算金と連動している。今回の懇話会アンケートでは農協概算金より「高くなる」が大多数。各県の概算金は25,000~32,000円に変化したが、その水準より高い単協や買取が行われている。

 

①米穀機構の令和7年6、7月分の米の景況調査(DI)

ⅰ)6月分米価の見通し指数も前月の59から35へ、過去最大の下げ幅、新型コロナ禍での米価低迷時期の指数と同一水準

 7月分は11ポイント増の46へ上昇、基準の50を下回っている。全国的な高温、渇水の影響による収量、精米歩留りの不安を反映。

ⅱ)6月分主食用米の需給動向のDI値は、73から43へ、過去最大の下げ幅。7月分の指数は42と横這い。平年並の水準では需給は緩む。

②堂島コメ平均10月限、12月限、2月限の価格動向

堂島コメ平均の10月限、12月限価格動向をみると、備蓄米の随意契約放出後、低下した。その後、先物価格は上昇に転じ、10月限は4日には、28,550円へ、12月限は9日の28,720円まで上昇した。その後模様眺めの状況が続いた。しかし、農水省の需給見通しの修正(需要の上振れ)の発表後、価格が28,500円前後から30,150~30,200円へ上昇した。

さらに、JA全農の概算金が30,000円前後と発表されたの受けて、徐々に上昇傾向にある。

堂島コメ平均、10月限、12月限 2月限価格動向

 

6月

2日

6日

9日

13日

16日

20日

23日

27日

10月限

27,750

27,670

27,600

25,400

26,720

20,760

27,330

12月限

27,200

27,500

27,580

26,380

26,320

27,300

27,490

27,800

 

7月

30日

4日

7日

11日

14日

18日

22日

25日

10月限

27,880

28,550

28,450

28,370

28,550

27,950

28,250

28,270

12月限

27,500

28,520

28,630

28,550

28,640

28,160

28,260

28,330

2月限

 

 

 

28,750

28,770

28,230

27,670

28,350

 

8月

28日

4日

8日

12日

18日

22日

22日

28日

10月限

28,550

28,950

30,220

30,170

29,730

30,600

12月限

28,600

28,980

30,150

30,200

29,750

30,930

31,200

30,830

2月限

28,470

28,990

29,900

30,150

29,800

31,520

31,400

30,960

 

③懇話会のアンケート結果

ⅰ)今回のアンケート結果

今年産の需給価格動向は不透明であるが、6月のアンケートで前年と同水準と高くなるが拮抗し、「低くなる」も存在していた。今回のアンケートでは「JAの概算金」と比べ、殆どが「高くなる」に変化した。「前年より高くなる」と回答した背景には、JA概算金を上回る価格での複数業者の業者による生産者と契約取引が拡がっていることである。そのため、一部のJAでは昨年より米出荷契約が減少している。つまり、産地での集荷競争が継続していることが、生産者、JAが「高くなる」予想の背景にある。

 

属性、価格動向

動向の理由

今年産の契約動向

生産者①高くなる

JAコシヒカリ26,000円以上提示

6年産不足、今年産全量契約

生産者②高

6年産の値上がりが不十分、7年産が本格化

概ね契約

生産者③高

市中相場が32,000円

ほぼ全量契約

生産者④高

 

 

生産者⑤高

 

 

生産者⑥高

集荷競争 3,5000円

 

JA①高

秋田で29,000円の買い付けの動き

加工用米は価格交渉で10%減

JA②同水準

主食用米横這い、加工用米5、輸出用同水準7

昨年と同一契約数量、個別販売増

JA③同じ水準

 

目安対比85%、6年産92%

集荷・販売①高 

価格不明、集荷対策のため

例年並、仕入即販売

集荷・販売②高

JAが概算金の値上げ、作柄の不安

昨年並総量、主食用の作付増加、精米販売の強化、輸出用米は複数年契約で確保

流通・卸売業者①高

作柄不明、産地での価格が敏感

価格上昇が強まる、資金力が必要

流通・卸売業者②高

作柄不明、JAからの数量が不明確

事前年間契約の提示、一部JA の複数年契約の提示

流通・卸売業者③高

作柄不明、高い価格でのスタート

 

流通・卸売業者④

同水準

JAとの取引比率が高い

平年作では過剰、顧客には相対取引価格を基準とした取引

流通・卸売業者⑤高

出来秋で在庫をもっていない業者の集荷競争

 

不明 高くなる

天候によるリスク

 

記者

天候要因 30,000円

 

ⅱ)前回のアンケート結果

 

 

前年と同水準

高くなる

低くなる

生産者9名

3

5

1

JA関係者5名

2

3

0

集荷・流通業者5名

1

2

2

 

生産者の意見: JAの概算金より高くなる。理由:集荷競争は継続している。備蓄米が少ない。状態では現物確保を優先せざる得ない。 作柄にもよるが、主食用米増産で「低くなる」

JA関係者の意見: 今現在、昨年よりも米出荷契約数が減っており、商系との価格競争が続いている。一次的に高値は見られるが、終息し、JAが買い支える。

集荷流通業者の意見: 収穫量が不安定なため、価格の目安が更に不透明になる恐れがある。備蓄米放出量の多いことと、7年産主食用米生産見込みが40万トンを越える見込みが重なり、下方修正を余儀なくされると思われる。

 

5.JAと農業法人の米販売方法-その多様化

①JAの買取販売

買取販売のみ 56JA(11%) 買取、委託併用 169JA(36%) 委託販売のみ250JA(53%) 

沖縄100%、東京99.5%、京都99.1%、大阪98.6%、徳島83.5%

 

②農業法人協会アンケート

会員の経営規模66.8ha

主食用米の販売量シェア 50t未満、14.3%、50~100t未満14.3%、100~200tが19.0% 200~300t18.3%、300~400t14.3%、400~500t6.3%、500t以上13.5%

506アンケート、126回答回答率25%

米の販売先

  • 法人協会アンケート
  • 米卸5%、農協系統23.1%、集荷団体17.5%
  • 消費者9%、食品・外食業者8.3%、小売5.6%

メインの理由

取引先が安定している 47、 長期の取引 39

取引価格が高い 34、 価格交渉が可能 24、 取引の決済が早い 19

農協との取引 18、 出荷負担の軽減15、 契約済み10

増加させたい販路:

個人消費者31.7%、こめ卸業者19.0%、農協以外の集出荷団体10.3%、小売業者8.7%、食品・外食産業8.7%、農協5.6%

取引価格を安定させたい 54、 取引価格を高くしたい 44、 販売先のリスク分散33

取引価格の交渉を可能にするため 21、 出荷負担の軽減17

 

6.農水省、各県、市町村の加工用米、輸出米等の支援策

 主食用米の価格上昇にともない加工用米、輸出用米、酒造好適米の生産維持と確保について、JA、各流通業者、加工メーカーが様々な課題を抱えている。加工用米、輸出用米、酒造好適米の生産維持のために支援策が必要となっている。

 

①酒造好適米の支援等

農水省  酒造好適米に最大3万円の助成(新市場開拓米に追加)

6年産 加工用米希望数量、22,276t(前年比98.6%、全農21,884t)

日本酒造組合要請 水活助成金に酒造好適米を加えること。加工用米の助成金を20,000円から40,000円へ

酒造業支援、秋田県 1億300円、経費増額の半額助成

長野県 県産酒米価格高騰対策費9,437万9,000円、県奨励品種(美山錦、ひとごごち、金紋錦等)6年産から上昇分の1/2、地産地消費の推進

高知県、酒造用米 4,000円補助、加工用米2,000円

 

⒜新潟県の県設定支援

新発田市、加工用米、輸出用米 10,000円支援

 

 

⒝長岡市の支援策

 

 

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