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「意見ひろば」:発展する農業法人に思う

4 経営の最重要課題は労働力の使い方―軽視されがちな労働力問題―

 何故法人化したのかについての話もあった。当然のことながら、意欲のある人材確保のために、一般の会社と同じように農場で働く人たちの社会的な保障を整備したということである。このこと自体は、別に目新しい話ではない。しかし、A法人では、職員をワーカー(労働者)としてではなく、パートナー(協同事業者)として雇用しているという。後継者育成の観点から、農業生産法人の中にはそうした法人があることをときどき耳にするが、A法人の場合には後継者問題はなく、また10人前後の職員を雇用しているので、経営者の経営哲学としてそうしているのであろう。余談になるが、A法人が経営理念を掲げているのも、従業員にパートナーとしての役割を期待してのことかと思う。

 パートナーとして人を雇うということは、農業以外の一般企業でもあまり見られないが、中小零細企業で発展の著しい企業の経営者の話を聞くと職員をパートナーとして使っている場合が多い。要は、その職員を信頼し、職員に大幅な権限を与えるということであろうが、それにより、パートナーとして扱われた人は、如何なくその長所・能力を発揮する。経営者が気のつかなかったことがパートナーの一言で気づかされ、それが大きな商機に繋がる可能性は高い。

 特に農業を志そうとする人は、現代の競争社会で失われた価値を農業に見出し、あるいは求めようとしており、地に足のついた人たちであるだけに、パートナーとして扱われれば、昨今の競争原理至上主義に歪められつつある農業、農村に新風をもたらしてくれるのではないかとの期待も膨らむ。

 それはさておき、人の雇用は、わが国のように世界的にも高賃金といわれている中では、中小零細経営者が最も頭を痛めている課題である。作った物が高い値で、しかも何時でも売れればいいが、物が豊富な現在は、競争が激しい上に、景気には波がある。まして、農業の場合には、工業製品以上に季節による大きな波があるので、通年で人を雇うには中小零細企業以上に大きなリスクを伴う。我が国には、欧米諸国のように安い移民労働者はいない。季節的な臨時のアルバイト雇用で対応できればまだしも、必要な時に必要な人が集まらないのが今日の状況である。特に中山間地域では、移出で人口が減少するとともに高齢化が進み、必要労働力の手当ては容易ではない。そうだとすれば、規模の大きな農家、法人は、通年での雇用が避けられないが、高賃金であるだけに、通年の仕事量が確保できなければ雇用が経営のネックになってしまうことは目に見えている。A法人でも通年の仕事量の確保、特に冬場の仕事に目途を付けられたから中山間地域であっても10人前後の職員の雇用が可能になったものと思われる。家族農業でも、農業で生活していこうとすれば1年を通じて平均して所得になる仕事の確保が求められる所以であり、強調されているほど甘いことではないが、6次産業化が求められる所以であろう。

(事務局長・土田 清藏)

(※農政調査委員会では、本欄へ掲載するための記事を随時受け付けています。食と農に関するご意見の掲載を希望される方はメールフォームで事務局までお申し込みください。折り返し投稿のための概要をお知らせいたします。)

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