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「意見ひろば」:「人・農地プラン」の現代性と作成初年度における実態
―山形県T市での実態調査から―

2.「プラン農政」と人・農地プランの現代性

 ところで、人・農地プランとは、集落を中心とした地域における話し合いを前提とした施策である。先の農林水産省の取組方針では、「徹底した話し合いを通じて、今後2年間程度で人と農地を抱えるすべての市町村、集落で策定することを目指す」(p.1)とされ、農林水産省の都道府県担当者向けの資料でも、「人・農地プランの範囲は、集落や自治会等のエリアが基本ですが、地域の実情に応じて複数集落やもっと広いエリアも可能です」(農林水産省「各地域の人と農地の問題の解決に向けた施策」、2012年9月)とされている。

 周知の通り、政策実現のため、集落等に「プラン」や「ビジョン」を作成させることは農政の伝統的手法である。古くは昭和恐慌期の農村経済更生運動における「経済更生計画」の策定に始まり、最近では中山間地域等直接支払制度による「集落協定」「集落マスタープラン」、産地づくり対策における「地域水田農業ビジョン」が挙げられる。いずれも、集落・地域での話し合いを前提とし、政策対象となるかわりに「プラン」の作成を義務付けるものであった。いわば「プラン農政」とでも呼べる伝統的手法の中で、今回の人・農地プランも従来のパターンの繰り返しのようにも思える。

 しかし、人・農地プランの作成には、従来の繰り返しとはいえない現代性も存在する。第1に、平成の市町村合併が終結した後の、初めての「プラン」作成ということである。2010年3月に市町村の合併の特例等に関する法律が期限切れを迎えるまで、全国の市町村数は1999年4月の3,229から1,719へとほぼ半減した。平成の市町村合併による自治体の機能低下への懸念は様々なところで指摘されているが(*2)、果たして自治体農政は人・農地プランの作成において機能したであろうか。

第2に、人・農地プランは「連携する農業者」、つまりは「農業をやめる人」を集落内で特定する。これまでも構造政策を推進していく上で選別的な要素を「プラン」に盛り込むことはあったが、それはいずれも「これからの農業を担う人」の特定であった。「農業をやめる人」については、これまでも集落の中で何となく意識が共有されてきた部分はあるが、それを「プラン」に記載するということはおそらく初めてのことであり、これまでとは全く異なる次元に到達したといえるのではないか。同じくこれまでとは全く異なる次元の貿易自由化であるTPPを前にして、農政もついに一線を超えたと筆者には思えるのである。

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(*2): 例えば、小田切(2009)、pp.12-15、を参照。

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