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「意見ひろば」:「人・農地プラン」の現代性と作成初年度における実態
―山形県T市での実態調査から―

(3)「農業をやめる人」を特定した効果

 では、「農業をやめる人」を特定してまで作成された人・農地プランにはどれだけの農地集積効果があるのか。ここでは、作成の中心となり、農地集積効果が期待される平坦水田農業地域であるT地区に対象を絞って考察していこう。

 表2は、人・農地プラン上の「連携する農業者」(貸付希望者)と「中心となる経営体」(集積対象)の比率別のプラン数を示したものである。分母に中心となる経営体数、分子に連携する農業者数をとり、1つの集積対象に対してどれだけの貸付希望者が確保されているかを示した。表からは、両者のアンバランスが読み取れる。左欄①を見ると両者の比率が1.0未満の人・農地プランが約6割を占めているが、これは1つの集積対象に1人の貸付希望者を用意できない状況を示している。また、連携する農業者がいない人・農地プランも10あり、そもそも農地集積がプラン上は不可能なものもある。農家子弟が多く存在すると思われる新規参入者を、中心となる経営体から除いた場合の右欄②でも状況は大きくは変わらない。果たして、作成された人・農地プランは集積希望者に対して十分な農地貸付を担保するものとなっているのか。

表2 「連携する農業者」と「中心となる経営体」の比率別人・農地プラン数

「連携する農業者」と「中心となる経営体」の比率別人・農地プラン数

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注1:①=連携する農業者/中心となる経営体
注2:②=連携する農業者/新規参入者を除いた中心となる経営体
注3:①と②のプラン数の計が異なるのは、中心となる経営体から新規参入者分を差し引くと0になるプランがあるからである。

 そもそも、作成された人・農地プランは十分に貸付希望者を掘り起こすものとはなっていない。プラン参加農業者全体に対して貸付希望者の数が少ないのである。は横軸にプラン参加農業者数をとり、縦軸にプラン参加農業者に対する連携する農業者の割合をとって、プランごとにプロットしたものである。後者のT地区平均の値は5.2%と低いうえに、農地集積の促進が期待される大規模プランほど割合が低くなる傾向にある。つまり、人・農地プランを作成したことによる農地流動化促進の効果は小さいことが予想できるのである。人・農地プランは離農をあらかじめ決めていた農業者に対しては農地集積協力金の給付によって背中を後押しすることにはなるだろう(貸付需要の先取り)(*4)。しかし、より積極的に新たな貸付希望者を掘り起こすことにはならないからである。

 

プラン参加農業者数と連携する農業者との割合の関係

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図 プラン参加農業者数と連携する農業者との割合の関係

 総じて、人・農地プラン作成によって期待できる農地集積効果は小さいと、T市における事例からは予想できる。

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(*4): T市役所担当者からの聞き取りによる。

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