理事長の部屋:「進む農協離れ―組織優先やめ「売る」に徹せよ」
農協は硬直した農産物の販売システムを温存し、需要をかえって減らしてきた。
農業を成長産業にするには農協の改革が不可欠だ。
(※本記事は「週刊エコノミスト」2014年10月28日特大号に掲載された記事を再編したものです。)
日本農業は産出額と農業所得の大幅な減少に直面している。さらにTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉など国際化への対応も迫られている。グローバル化が進んでも国内にとどまる農業には成長産業となるべく期待が掛かっており、政府が成長戦略において強く改革を求めるのが農協(農業協同組合)である。ではなぜ、農協改革が農業の成長産業化、農家所得向上において焦点となるのか。
農協は欧州(EU)や米国の農業でも販売、資材供給、金融において大きな役割を果たしている。というのは、大規模農業経営であっても、食品工業や流通業者、農業資材メーカーに比べて圧倒的に小規模であり、組織化して市場での交渉力をつけることが不可欠だからである。
EUや米国では品目ごとに組織された専門農協が販売と需要拡大を担う。たとえば、日本では企業だと誤解されるが、サンキストは米国のかんきつ類生産農家が作る農協である。サンキストのようにブランド化と農産物輸出を展開する農協は少なくない。
ところが、日本の農協は販売や資材調達において役割を十分に果たしておらず、農協の本来の目的である農業者の所得向上を実現できていない。そればかりか、その存立を揺るがす危機が潜在的に進行している。もう改革を先送りにする猶予はない。今こそ農協は「売る」ことに徹する組織へと転じなければならない。