理事長の部屋:米価の現状と今後の水田経営 直接支払制度の充実を
農協概算金の大幅な下落により、生産者手取りの減少と水田経営収支の悪化が危惧されている。生産者手取りは米価とナラシ対策の補填額および米の直接支払交付金で構成されており、生産者手取りの減少は複合的なものである。
(※本記事は「全国農業新聞」(2014年11月21日付)の食農耕論に掲載された記事を再編したものです。)
■概算金下落幅大きく、ナラシで十分に補填可能か懸念■
しかし産地ではナラシ対策の補填額が不透明なため、価格下落のみが強調されている。補填額は標準的収入額と相対取引価格の平均との差額の9割である。算定基礎となる当面の指標は、生産者手取り米価が農協概算金、相対取引価格が相対基準価格である。ところが概算金の下落幅が相対基準価格のそれよりも大きく、予想される補填額は概算金の下落を十分に補填できないという懸念が生じている。
さらに米の直接支払金の減額が追い打ちをかけている。東北のある市では概算金、直接支払い、ナラシ対策を考慮して参考小作料を算定してきた。本年の事態を考慮した参考小作料は、昨年に比べて10アール当たり1000~1500円の減額、つまり所得減という。ナラシ対策が制度どおり機能すれば、生産者手取りが減少した主要な要因は直接支払いの減額なのである。
■15年産以降も米価低迷、標準的収入額が低下する懸念■
ところで米価下落の一つの要因は2012、13年産の全農相対価格の維持によって生じた米消費量の減少である。特に外食、中食業者がご飯の盛りなどを減らしたため、約30~40万トンの需要が減少し、その部分が過剰となったといわれている。業務用米価格が大幅に低下した現在でも需要は回復していない。
そのため、15年産以降も米価が低迷し、ナラシ対策の標準的収入額も低下するという不安や懸念が生じている。
今回の一連の事態は、価格維持による生産者所得確保は需要を減らすことを示した。
中期的にみても、ウルグアイラウンド合意以降、米の生産額は米消費減と米価下落により6割程度に減少した。生産調整による価格維持システムが限界となったことは明確である。