理事長の部屋:価格高騰のもとでの酒造業の7年産原料米の現状と課題ー生産者と酒造業界が持続可能な所得補償の必要性
(一財)農政調査委員会理事長 吉田俊幸
1.日本酒原料米の基本問題
酒造業の原料米は、国産米100%であり、国内米需要での酒造業原料米シェアは無視できない。日本酒原料米は5年産では、192千tであり、うち酒造好適米が80千tで41%、加工用米が68千tで35%、その他が45千tで24%である。その他の構成は、主食用米が7割、特定米穀が3割である(令和3年調査)。しかし、5年産は、高温不作により篩い下米が大幅に減少し、主食用米も不足したため、その他が4年の53千tから45千tへ減少している。一方、令和5酒造年度・焼酎製造用仕入数量は、5万6,286tであり、MA米が3,022tなので、約5万3千tである。なお、6年産が5,509t不足し、7年6月現在、2万t不足している。酒造業の国産原料米は約25万tであり、主食用米の約4%を占めている。
ところが、日本酒はGIにより、国産米100%使用が義務づけられている。さらに、日本酒GIに加えて、新潟県、秋田県の14地域GIも設定され、設定された地域米の100%使用が原則である。また、焼酎も球磨焼酎はGIを設定している。さらに、大手焼酎メーカーが国産農産物100%を使用する宣言を行っている。以上により、原料米が高騰し、原料米が不足しても、海外産米を使用することは不可能である。したがって、原料米価格の高騰と不足は、ビジネスモデルの根幹を揺るがし、経営内容の見直しと企業の存立基盤が揺らいでいる。
(注)日本酒GIに加え、灘五郷、新潟、秋田等の14地域でGIが設定されている。海外産米を使用した場合には「日本酒」ではなく「清酒」になる
さらに、日本酒等の酒造業は地域の地場産業であり、その存続、発展は地域農業・地域振興につながる。日本酒は、高付加価値の輸出品であり、今後も拡大の可能性が高い米加工品である。日本酒の輸出量は原料米換算で令和6年が17,492tであり、米・米加工品輸出量の25.7%を占めている。日本酒の拡大は、米輸出拡大の最も有効な手段である。原料米の高騰は、酒造業のもつ農業・地域に役割・機能を損なう可能性がある。
2.日本酒出荷量の減少傾向と特定名称酒、輸出の増加
日本酒の国内出荷量は、他のアルコール飲料との競合などにより減少傾向で推移しており、令和6年は約38万klである。日本酒全体としても、対前年比1.2万kl 減である。その中で、特定名称酒は、令和2年から6年まで142千klから146千klに横這いに推移し,特定名称酒のシェアは37~38%となっている。一方、輸出シェアは増加傾向にあり、6年には、輸出シェアは7.6%であり、1割に近づいている。
図1 日本酒の国内出荷量の推移
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(出典:農林水産省資料より)
表1 日本酒の全出荷量に占める輸出量の割合
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(出典:農林水産省資料より)
以下、「日本酒産業の新展開」(日本の農業260・261、農政調査委員会)をもとに酒造業の動きを簡単に整理する。
現在の日本酒の市場構造を前提とすると、大手企業と地方上位(具体的には上位40社)では今後も輸出が拡大するとともに、特定名称酒の比重が高まることが予想され,2019年から2022年の動きを整理すると、上位10社(44,180~7,226kl、1万kl以上9社)は、19年対比で出荷量シェアを6.8ポイント拡大している。家庭用需要の中心であり、量販店向けのパック酒は、出荷量の69%、シェアが91%であり、上位10社が独占的地位を占めている。コロナ禍でも、この分野は、需要が維持された。その要因は、主力である量販店での家庭用需要に対して、新製品の投入や特定名称酒による高級化で対応したことにある。さらに、特定名称酒により、輸出をはじめ様々な形態で需要を開拓している。特定名称酒、輸出の割合は低いがシェアは最大であり、量販店での家庭用需要に加え、特定名称酒によるブランド化、輸出拡大も事業戦略の一つとなっている。
11~20位(6,733~1,862kl)は、出荷シェアを1.2ポイント拡大しているが、その要因は特定名称酒によるブランド化と輸出拡大にある。特定名称酒と輸出は出荷割合もシェアも、出荷量シェアより高くなっている。また、コロナ禍での飲食店需要の減少を家庭用需要と特定名称酒のブランド化と輸出拡大によって出荷数量を維持してきた。
表2 出荷数量順の出荷数量、特定名称酒、輸出の動向
出荷量シェア 特定
名称酒同シェア 輸出量 同シェア パック酒 同シェア 19年 22年 割合 割合 割合 割合 割合 割合 上位10社 50.0 56.8 12.7 20.6 5.7 35.3 69.0 91.3 11~20位 9.2 10.4 56.6 16.8 16.0 18.2 18.9 4.6 21~30位 4.0 3.9 41.4 4.6 12.0 3.6 22.9 2.1 31~40位 3.0 3.0 56.7 4.8 10.1 2.9 18.3 0.9 41~50位 1.8 1.8 65.6 3.4 14.2 2.2 13.7 0.6 50位以下 32.0 24.1 50.2 37.8 0.5 61位以下 31.2 22.9 (注)上位10社:44,180~7,226kl、1万kl以上9社、11~20位:6,733~1,862kl、21~30位:1,750~1,430kl、31~40位:1,377~923kl、41~50位:913~608kl
21~50位は出荷量シェアが横這いであり、飲食店需要の減少を特定名称酒によるブランド化と輸出拡大でカバーしているが、飲食店需要の減少を完全にカバーできなかった。
特定名称酒の出荷割合とシェアをみると、1~10位が出荷割合20.6%、シェア12.7%、11~20位が同56.6%、16.8%、21~30位が同46.1%、4.6%、31~40位が4.8%、41~50位が同65.6%、3.4%である。上位50社のシェアは 50.2%であり,51位以下のシェアは49.8%(同24.1%)であり、両者で二分している。
特定名称酒の出荷シェアは、1~10位のみが全出荷シェアを下回っているが、11位以下は全出荷シェアを上回っており、出荷割合も5~6割前後である。11位以下は特定名称酒主体の出荷・販売であり、51位以下の地場・中小メーカーは、特定名称酒を主体とする生産・販売の構造となっている。
次に、出荷数量上位6府県の特定名称酒割合は、京都、埼玉、千葉では9~13%、兵庫が15%なのに対し、米生産県である新潟県が79.1%、秋田県が49.5%と高くなっている。府県別にみると、米生産県を中心とする地域では、特定名称酒出荷割合が約2/3を占めている。
輸出動向をみると、1~10位は輸出割合が5.7%、輸出シェアが35.3%、11~20位(7226~1862kl)は同16.0%、18.2%であり、21~30位は、同12.0%、3.6%、31~40位、同10.1%、2.9%、41~50位は同14.2%、2.2%である。21~50位(1,730~608kl)の輸出シェアは,22年の8.7%に対し、19年も8.7%であり、同じ水準である。51位以下では輸出シェアは、37.8%であり、1~10位の輸出シェアよりも2.5ポイント高い。以上から輸出量は、大手とともに準大手(1~20位)が主体であるが、地方中堅企業及び地場の中小企業も重要な地位を占めている。輸出シェアが2割を超えるメーカーが生まれている。
特定名称酒、輸出拡大という日本酒需要の構造変動のもとで、自社ブランドの価値の維持・向上が重要となっている。同時に、原料米の仕入・流通にも変化が生まれている。かつての全農経由の全国・県単位の流通から地元・地域流通へのシフトである。具体的には、地元の生産者・法人との契約栽培・指定方式という「顔のみえる」調達方式が拡大している。その動きの一つが自社生産方式である。日本酒GI、地域GIの設定・認可はその動きに拍車をかけている。地元産以外の県産、県外産米でも流通ルートに関係なく日本酒メーカーは、産地に対して産地訪問、品質分析、技術交流している。その中で、生産者、法人との直接取引も生まれている。
3.日本酒原料米の価格高騰と需要
(1)酒造好適米の需要と価格動向
令和6年度の需要量調査では、令和7年産酒造好適米の需要 見込みは、合計で68千tと令和6年産に比べてやや増加であり、令和5年産に比べて1%増であったが、今年度の需要量調査においても、令和5年産に比べて3%増となっている。加工用米の需要量については、令和7年産の需要見込みは、合計で63千tと令和6年産に比べて3%の増加である。
しかし、主食用米の価格高騰により、各酒造メーカーは、7年産の需要見込みとは違う対応を求められた。
酒造好適米は、主食用品種に比べて栽培が難しく、収量が低いこと等から、主食用米に比べて高値で取引されてきた。図のように、山田錦(兵庫)や五百万石(新潟)の販売価格は、主食用米の相対取引価格よりも高い水準であった。ところが、令和6年産では、主食用米価格が高騰し、主食用米平均相対取引価格が五百万石(新潟)の販売価格よりも高水準となった。さらに、最も高い価格の山田錦(兵庫)も、平均相対取引価格と同一水準となり、銘柄米の相対取引価格水準よりも低くなった。
図2 酒造好適米の販売価格の推移
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(出典:農林水産省資料より)
(2)7年産酒造好適米の価格高騰と購入数量の減少
①価格高騰したが主食用米価格とは逆転
7年産になると、酒造好適米の販売価格は、農協概算金価格や相対取引価格に比べると低い水準となった。酒造メーカー8社のアンケートによると、7年産酒造好適米の酒造会社の仕入価格(平均)は、五百万石が、27,300円であり、6年産の16,450円に比べて10,813円、166%の大幅上昇であり、山田錦は、33,200円であり、6年産の27,000円に比べると6,200円,123%の大幅上昇である。7年産五百万石の仕入価格は、新潟コシヒカリの概算金よりも約6千円低く、越淡麗も5,500円低く、新潟コシヒカリの9月相対取引価格と比べると約1万円も低い水準である。なお、新潟県JA概算金は、 五百万石が24,200~26,000円であり、新潟コシヒカリの概算金より6,000円低い水準である
山田錦の仕入価格は、7年産が33,200円であり6年産と比べて6,200円、123%の大幅な上昇である。山田錦の上昇が五百万石よりも低いのは、6年産で値上げが先行したからである。山田錦の仕入価格は、兵庫コシヒカリの概算金より高いが新潟コシヒカリの概算金と同一水準である。しかし、新潟コシヒカリ、兵庫コシヒカリの相対取引価格よりも5千円程度低い水準である。JA兵庫西の概算金は、白鶴錦が29,000円、その他が27,800円であり、兵庫コシヒカリの概算金よりも高いが相対取引価格より低い水準である。
表2 酒造好適米の6年産、7年産価格と主食用米価格 (単位:円)
6年産 7年産 価格差(円) 概算金 相対取引価格 五百万石 16,450 27,300 10,850(166%) 新潟コシ 33,000 新潟コシ 38,613 越端麗 18,587 28,667 10,110(154%) 山田錦 27,000 33,200 6,200(123%) 兵庫コシ 26,300 兵庫コシ 38,049 ① 18,000 30,000 12,000(167%) 平均相対取引価格 ② 18,517 26,940 8,423(145%) 36,895
次に、JAの概算金を各種資料により検討すると、長野美山錦が27,000円、富山県の酒米が29,000円と高水準ではあるが、主食用米の概算金と比べると低い水準である。JA島根五百万石30,400円とJA概算金コシヒカリ28,400円と高いが、相対取引価格36,249円より低い水準である。JA山口では山田錦が28,000円であり、コシヒカリ概算金より26,400円高いが、相対取引価格35,590円より低い水準である。島根、山口では主食用米の概算金と相対取引価格との差をみると、酒造好適米の販売価格は相対取引価格よりも低くなると想定される。
7年産酒造好適米価格は、大幅な上昇に加え、主食用米価格よりも下回るという史上初めての事態が生じた。その結果、生産者にとって、酒造好適米の生産が主食用米に比べて所得、経営面で不利となった。そのため、7年産の酒造好適米が6年産と比べで、希望数量より減少傾向にある。さらに、主食用米価格の高騰が継続した場合、8年産の酒造好適米がさらに作付減が懸念されている。
酒造好適米価格高騰は、酒造メーカーのコスト増に結びつき、経営対応が迫られている。
②各メーカーの酒造好適米の仕入量と対応
まず、価格高騰及び主食用米との価格逆転という状況のもとで、酒造好適米を希望通りの仕入が困難なメーカーが生まれている。アンケートによると、8社平均の酒造好適米仕入量は、6年産の748.7tから7年産の666.4tへ、82.3t、11.0%の減である。6年産対比の7年産仕入数量をみると、101~105%が3社、95~100%が3社、20%前後減が2社である。
100%前後の6社は、中堅・小企業メーカーであり、酒造好適米を県内から調達している。メーカーは、生産者や農協との事実上の契約栽培となっており、前年並の数量を確保している。
しかし、酒造好適米が1,000t以上の大手メーカーでは、6年産対比20%前後の減である。大手メーカーは、酒造好適米を県内での事実上の契約生産だけでは不足するので、他県から全農、流通業者経由で購入している。他県からの購入する酒造好適米は作付減の影響を受け、購入数量が減少したと推測される。A社は酒造好適米の減少分を加工用米の仕入増でカバーしている。その事情を「酒米は一部品種で希望数量を確保できず。加工用米は新規取引を含めて数量を確保した。しかし、日本酒の生産量を減少させる」B社は酒造好適米、加工用米の仕入が減少しており、その他で部分的にカバーしているが、前年比に比べて原料米が約8%の減である。その要因と対策は「日本酒の原酒在庫量がある程度あることから必要な種別のみの生産に絞り、生産量を減少した」。大手メーカーは、酒造好適米の仕入減により日本酒の生産減で対応している。
(3)加工用米価格の高騰とその影響
原料米の一つである加工用米も主食用米価格の高騰により、価格が高騰した。しかし、加工用米が上昇したが、主食用米に比べ価格・所得水準が低いため、加工用米(うるち)生産量が減少している。6年産対比の7年産加工用米生産量は、全体で6.1%減、うち全国流通が19.0%減、地域流通が5.9%である。
地域流通は、生産者・農協等と地元メーカーとの契約的取引)なので、減少率は小さい。しかし、契約的な要素が希薄な全国流通は大幅に減少している。加工用もち米も21%減と大幅減になっている。
表3 加工用米の生産と作付動向
6年産 7年産 増減 うるち米 204,855t 192,438t -12,417t, -6.1% 全国流通 102,366t 82,936t -19,430t, -19.0% 地域流通 175,007t 163,015t -11,992t, -6.9% 全国作付面積 50,197ha 44,190ha -6,007ha, -12.9% 北海道 6,800ha 8,103ha 1,303ha, 119.2% 秋田 8,464t 5,581t -2,883t, -34.1% 群馬 1,356t 206t -1,150t, -84.8% 千葉 2,027t 1,514t -558t, -27.5% 新潟 6,760t 6,642t -118t, -1.7% 兵庫 667t 563t -104t, -15.6% 広島 358t 165t -193t, -53.9% 熊本 647t 262t -385t, -59.5% 宮崎 2,109t 1,550t -559t, -26.5% 鹿児島 1,443t 877t -566t, -39.5%
道県別にみると、北海道が119%と唯一つ増加したが、その他の県では横ばいか減少である。とくに、米加工産業が立地し地域流通割合の高い新潟は横ばいである。一方、兵庫は16%減、秋田、熊本、宮崎、鹿児島が大幅に減少している。加工用もち米と焼酎メーカー用の原料米の産地である。
しかも、加工用米価格も大幅に上昇している。表のように、酒造メーカーの7年産価格は1社を除くと、7年産加工用米価格は、23,000円から23,800円であり、6年産と比べると10,500円から12,000円前後、190から200%のアップ、つまり倍増している。平均で6年産の12,924円から7年産の22,581円で9,657円、175%の上昇である。
表4 加工用米の価格変化 (単位:円)
6年産 7年産 価格差 ① 11,750 23,800 12,050(202%) ② 15,400 19,300 3,900(125%) ③ 12,400 23,800 11,400(192%) ④ 12,000 23,000 11,000(192%) ⑤ 11,900 22,800 10,900(192%) ⑥ 12,000 22,400 10,400(187%) ⑦ 11,938 22,353 10,415(215%) ⑧ 16,000 23,200 7,200(145%) 平均 12,924 22,581 9,657(175%)
参考のために、ヒアリングによると、6年産の12,000~3,000円から全農東日本が23,800円、全集連が22,000~23,000円であり、約1万円の上昇である。東日本の農協での買取価格は、6年産の11,300円から7年産の24,000円へ12,700円、212%の上昇である。熊本県球磨焼酎加工用米も5年産が㎏180円、6年産310円(18,600円)、7年産470円(28,200円)と大幅に上昇している。
以上のような加工用米の減産と価格の大幅な上昇のもとで、8社の加工用米仕入れ数量は、8社平均で6年産の1,600tから7年産の1,507tであり 前年比94%の水準である。酒造好適米と比べ各社の増減がバラバラである。 10%増が2社、10%増が2社、5~10%増1社0~5%減が2社,10%前後減が2社、20%減が1社である。1,000t以上4社のうち3社は減少、1社は増加である。
加工用米が増加したメーカーは新規取引を拡大するなど、7年産の仕入れを徐々に拡大したメーカーである。20%減のメーカーは、加工用米の減を一部その他の増でカバーしている。
4.今年産の原料米の状況とメーカーの対応
(1)原料米への対応
以上の原料米をめぐる状況のもとで、各メーカーの原料米への対応は、以下の通りである。「今年産については、(原料米)仕入数量の確保は問題ないが、価格が異常に高騰している」。「仕入は確定していないが、ほぼオーダー通りに入ると予想」。「今年産米の仕入量は何とか購入予定数量を調達」。「今年産は必要数量を確保できた」「とりあえず製造を検討している酒の分は確保できた」というように多くのメーカーが原料米とくに酒造好適米の仕入予定数量を確保している。
このように、価格高騰と生産減少のもとで、酒造好適米、加工用米の仕入れを予定数量確保できた背景は、以下の諸点である。特定名称酒、輸出拡大により、各メーカーが原料米をかつての全農経由の全国・県単位の流通から地元・地域流通へシフトしたことである。具体的には、地元の生産者・法人との契約栽培・指定方式という「顔のみえる」調達方式が拡大している。地元産以外の県産、県外産米でも流通ルートに関係なく日本酒メーカーは、産地に対して産地訪問、品質分析、技術交流している。その中で、生産者、法人との直接取引も生まれている。
とはいえ、一部のメーカーでは「加工用米は既存の取引先では必要数量が確保できず、新規取引先を含めて数量確保。酒米は一部品種で希望数量確保できず」「米が必要数量、確保できない」という例が生じている。逆に、「(価格高騰による日本酒の値上げにより)出荷予定数量の下方修正分の購入キャンセル」した例もある。
また、多くのメーカーは、「来年産以降数量を確保できるか購入できる適切な価格になるかを不安視している。
(2) 価格高騰に対する対応
価格高騰への各メーカーの対応は、「販売価格を値上げする」が7/8であり、残りの1社は、「1年前に値上げしたが、毎年の値上げはむずかしい。来年以降の値上げを検討」であり、全社が、販売価格の値上げを検討しているが、多くのメーカーは「酒造好適米、加工用米、その他の全ての原料米で価格が大幅に値上がりとなり、値上がり分を日本酒製品に価格転嫁することは困難であり、(その対応に)苦慮している」。
そして、販売価格の値上げにより、多くのメーカーが販売数量の減少を懸念し「日本酒の生産量を減少させる」が5/8、原料高の対策として「品目構成を変化させる」が3/8である。
具体的には、「米の品種や精米歩合によって異なるがℓ当たり100~200円程度原価があがるため値上げが必須である。安価なディリー酒に比重が増加するため、売上高減少する可能性が高い。結果として生産量の減少や品目構成の変化につながることを懸念する」。「米価格高騰により、昨年の販売数量が減少し、日本酒の生産量は減少させる」。「酒の販売は年明け後に値上げをした際に数量の減少が予想される。」「日本酒販売数量減、さらに商品値上げによる販売数量減少が懸念される」というように、日本酒の値上げが販売数量の減少という負のスパイラルをいずれのメーカーも指摘している。
さらに、値上げしても、利益が減少するのである。「米価格高騰分は、企業努力で吸収できないため値上げを実施するが、値上げによる消費者の買い控えを勘案し高騰分に見合う値上げ幅ではない」。「生産コストアップで利益が確保できなくなる」あるいは「日本酒の原酒在庫がある程度あることから、必要な種別のみの生産に絞り、生産量を減少した。また、販売価格を値上げしたが、今年産の高騰分まで転嫁できておらず追加の値上げが必要であるが、販売に大きな影響が予想される」等である。
表5 価格高騰への各メーカーの対応
日本酒の生産量を減少させる 5 販売価格を値上げする。 7 品目構成を変化させる。 3 販売先を変更する。 0 その他 1 (ヒアリングより作成)
5.生産者と酒造業界が持続可能な所得補償
酒造好適米、加工用米の価格高騰さらには、その他の米価高騰が継続すると、酒造業の「ビジネスモデルの維持が困難であり、存続の危機を迎えている」。「7年産価格では経営面で危機的な状況」であり、「加工用米の仕組み・制度に関する見直しがなければ、酒造メーカー、パックご飯業界等は継続が無理な状況」にある。つまり、「酒造メーカーの(現在の)ビジネスモデルでは(企業経営の)継続が無理な状況」にある。
そのような状況を打開するには「原料米の安定した金額と数量を調達できるようにするための支援が必要である。これは酒造好適米だけではなく加工用米も含む。作付け誘導するために農家に10a当たりの補助金を出すのも重要である」「補助金等によって、生産側と需要側が量及び価格とも持続可能になる原料米への支援政策を望みます」「米生産者と実需者双方が理解でき、再生産可能な価格レベルを維持できる安定した米政策」が必要とされている。そのほか、「今後は酒造メーカーが農業参入するための補助事業も必要になる」としている。
表6 各メーカーの必要とする施策等
加工用米の仕組みの改革 4社 酒米への助成金、加工用米への助成金増額 4社 生産側と需要側が量及び価格とも持続可能になる原料米への支援政策 3社 高温に強い酒米の開発 1社 (ヒアリングより作成)
