農政調査委員会は農業、農村の現場から提言します - Since 1962

理事長の部屋:令和の米騒動の新展開-米価高騰から米過剰、価格下落へ

(一財)農政調査委員会理事長  吉田俊幸

1.スーパー販売価格、相対取引価格の高止まりとスポット取引の売り過剰、価格低下

(1)スーパーの価格と相対取引価格の高止まり

 令和の米騒動は、米価高騰から価格低落という新たな段階に突入した。

 スーパーの1/12〜1/18の全POSデータ平均での米の販売価格(5㎏当たり)は、前週比横ばいで+16円の4,283円/5kg(前週比+0.4%、対前年同期+18.1%)であった。米価格の推移をみると、12月28日が4,424円、21日が4,421円、14日が4,424円であり、年末年始のコメ価格は、2週ぶりに最高値を更新し5kg4,416円に前の週より93円(2.2%)高くなった。その後、価格がやや低下したが、依然として高止まりである。

 なお、銘柄⽶(70%)の平均販売価格は前週比+40円(+0.9%)の4,481円/5kgであり、ブレンド⽶等(30%)の平均販売価格は前週比▲38円(▲1.0%)の3,813円/5kgである。指標となる相対取引価格は、11月、12月の平均価格が前月比と比べ値下がりしたが、まだ高い水準にある。11月は、37,058円で前月比98%とやや値下がりしたが、令和6年11月比で152%の13,097円高い水準にある。12月も36,075円で前月比99%の418円とやや値下がりしたが、6年12月比で146%の11,410円も高い水準にある。


(2)スポット取引での売り過剰と価格下落

 その一方で、スポット取引状況をみると、売り過剰(売り手の希望価格では、買手が殆ど存在しない状況)とともに価格下落の動きが1月上期の取引きで表面化した。

 取引会の詳しい内容は公表されていないが、商経アドバイスによると、第6回取引会(11月27日)では、106産地品種銘柄276,667俵が売り提示されたが、その数量は、10月30日に比べ23%減(前年同期比4.8倍)である。上場銘柄の上場価格(売り唱え)30,723円、前回比8%の2,611円安である。にもかかわらず、成約数量17,114俵、上場数量の6%である。

 クリスタルライスの公表取引銘柄数にも現れている。公表取引銘柄数が10月上期8銘柄⇒10月下期7銘柄⇒11月上期4銘柄⇒11月下期2銘柄⇒12月上期1銘柄⇒12月下期1銘柄と減少していた。

 1月上期の取引会(1月15日・令和7年第7回取引会)では、出品は93産地品種銘柄265,000俵、前回比26%減である。上場銘柄の上場加重平均価格(売り唱え)は、26,303円、前回比4,420円(14%)下落している。上場数量は、東北あきたこまち、ひとめぼれ、関東銘柄米は約50%減、関東コシヒカリは20%増である。関東銘柄米を除き、大幅に減少している。

 公表銘柄数は5銘柄に増加したが、出品銘柄数に比較すると少数であり、売り手の上場価格では買手が余り存在しないことを示している。


表1 1月上期取引き価格(円/60㎏)

1月上期 相対取引価格12月 前期取引価格 前年取引価格
青森まっしぐら 22,709 34,992 (28,071)
宮城ひとめぼれ 25,060 36,888
秋田あきたこまち 24,973 38,322 40,137
関東コシヒカリ 24,417 37,485(茨城)
関東銘柄米 23,061 35,713(茨城*)
33,704(千葉*)
23,050 30,592

(茨城*:にじのきらめき;千葉*:ふさこがね)
(データ:(株)クリスタルライスより)


 公表された取引価格と12月の相対取引価格を比較すると、青森まっしぐらが12,283円(35%)安、宮城ひとめぼれが11,828円(32%)安、秋田あきたこまちが13,349円(35%)安、関東コシヒカリが茨城コシヒカリ相対取引価格と比べ13,068円(35%)安、関東銘柄米は、茨城にじのきらめきと比べ、12,652円(35%)安である。取引が成立した銘柄の価格は、12月相対取引価格と比べ、11,800~13,300円程度、35%の低い水準である。クリスタルライスの価格提示された11月下期と比べ、青森まっしぐらが5,300円(20%)、関東銘柄米が4,600円(17%)の下落である。

 代表するスポット取引でクリスタルライスでは、売り過剰からさらに発展して一部の産地銘柄の取引価格が相対取引価格に先行して13,000円、35%安となった。

 さらに、日本農業新聞(1月15日)によると、米の業者間取引(14日)が新潟一般コシヒカリは60㎏当たり27,300円~27,500円(税別)、北海道ななつぼし1,000円下げた29,800~30,000円、秋田あきたこまち26,900~27,100円、茨城コシヒカリ25,200~25,400円と報じている。この価格は、12月相対取引価格と比べると、新潟コシヒカリが約10,000円、北海道ななつぼしが6,500円、秋田あきたこまちで約10,000円、茨城コシヒカリが12,000円程度、低い水準となっている。

 クリスタルライスの取引やその他のスポット取引では、売り過剰から価格下落の動きへ展開している。


(3)米価と需給見通し指数の低下

 農林水産省の流通動向調査によると、25年11月時点での民間の在庫量は、前年より70万t多い、329万tと増加している。集荷数量のうちコメ卸等との契約進度は82%で前年比同月より11ポイント低下し、未契約数量385,000tで前年同月比187%増、約3倍に増加した。

 さらに、12月の米穀機構調査(2026年1月8日)では、国内の主食用米の需給動向についての現状判断DIは「27」で11月調査から7ポイントと「大幅に減少」した。需給が緩和しているとの見方がさらに強まり、向こう3カ月の見通し判断DIは「26」で前月から5ポイント下がった。米価と需給見通し指数が20台に落ち込むのは、コロナ禍の2021年秋以来となった。

 一方、米価水準についての現状判断DIは「88」で前月から3ポイント減となったが、米価水準が高いという見方は続いている。向こう3カ月の見通し判断DIは「27」で前月から5ポイント減少し、米価が下がるという見方が前月よりさらに強まった。取引関係者が今回の判断を行うに当たって考慮した要因でトップだったのは「国内の在庫水準」で44%、次いで「米穀の調達状況」が34%、「消費者の動向」が32%だった。

 以上のスポット取引や米穀機構のDIの動向や需給見通しの8年6月末在庫を踏まえて、神明の藤尾社長は12月4日の新潟県新発田市での講演で「このままいけば(米価格が)暴落するのは間違いない。かなり暴落する可能性はある」と指摘した。新潟県農協中央会長(伊藤氏)も、同様の指摘をしている。



2.需給見通しの算出方法の一部手直しと民間在庫数量

(1)需給見通しの民間在庫数量と相対取引価格

 「米価の大幅な下落の懸念」は、スポット取引、DIの動向と農水省の令和7/8年需給見通しの令和8年6月末民間在庫229万tの場合、その数量での過去の相対取引価格の水準が根拠となっている。

 令和8年6月末民間在庫229万t(農水省需給見通し)は、平成27年(2015年)の226万tに匹敵し、過去20年間の最大数量である。過去の民間在庫数量と相対取引価格との関係をみると、平成25年(2013年)の6月末民間在庫224万t、相対取引価格14,341円、平成26年(2014年)が220万t、11,967円、15年226万t、13,175円となっている。しかも、当時と比べて主食用米が60~70万tも減少している。民間在庫の全体需要量に占める割合が、2013~2015年は29%であったが、令和7/8年産で32%である。需給見通しでの6月末民間在庫量は、2013~2015年に比べるとさらに過剰である。

 農林水産省の令和7/8年需給見通しのもとになる根拠は、令和7年6月末民間在庫量は155万t、生産者篩い目幅の生産量715万t、1.7㎜以上の篩い下米の生産量32万t、備蓄米の買入量が23万tであり、したがって、供給量は748万tである。需要量が687~711万tであり、6月末民間在庫量が215~229万tである。


(2)令和米騒動の要因-需要増に求める農水省、最大の要因は高温不作による生産減

 令和7/8年需給見通しは、農水省による令和の米騒動・価格高騰の要因分析にもとづいて従来の方式から一部修正している。

 令和の米騒動の要因を整理すると、第一は、高温障害による精米歩留りの低下である。精米歩留りは令和4年産が90.0%(平常時の値)であったが、令和5年産が88.6%であり、約10万t減、令和6年産が89.2%で約6万t減であり、2年間で16万tの減である。

 第二は、インバウンド需要による消費量の増加である。令和4/5年が2.1万t、令和5/6年が5.6万t、令和6/7年が6.3万tあり、2年間で11.9万tである。

 第三は、家計購入量の増加である。2人以上世帯の購入量は、令和4/5年が56.6kgなのに対し、令和5/6年が57.2kgであり、対前年約2万t増、令和6/7年が60.2kg/世帯であり、対前年約11万t増である。二つの需要増が米消費増加量は約25万tとなる。

 以上の要因による需給見通しとの2年間のギャップは約37万tとなる。3つの要因を整理すると精米歩留りの低下もあるが、高温による生産減よりも、農水省は最大の要因を需要増に求めている。

 しかし、令和米騒動の最大の要因は、令和5/6年産が高温障害というよりも高温不作による生産量の減少である。高温不作の特徴は、精米歩留りの低下とともに篩い下米発生量の減少にある。高温不作では、高温のため米粒が大きくなるが農水省が分析したように精米歩留りが低下する。もう一つの高温不作の特徴は、粒が小さい篩い下米が大幅に減少することである(米産業懇話会荒幡氏の報告)。具体的には、篩い下米の発生量は、令和4年産が51万tなのに対し、令和5年産が32万t、令和6年産が40万tであり、2年間で30万tの減である。精米歩留りの低下と合計すると2年間で46万tの生産減となる。

 ところで、篩い下米は、通常、一部(業界では「中米」と呼ばれる7㎜以上の篩い下米の一部)が主食用米にも利用されるが、米菓、酒造用、味噌用等の米加工食品業者の原料米でもある。食品業者は、操業度を維持するため、篩い下米(原料米)の不足から、主食用米相当の米を高値であっても購入したのであり、主食用米の供給量を減少させたのである。事実、最初に価格が高騰したのは、篩い下米である。米菓、酒造業者が令和6年の春に備蓄米放出を陳情した。

 以上のように、令和の米騒動の原因は、令和5/6年産の高温不作による生産減つまり新たな時代の高温不作による生産減であり、農水省がこの点を見落としており、不作への対応が遅れたのである。


(3)米騒動の変動要因による需給見通し策定方式の見直し

 農林水産省は、米騒動の要因分析にもとづいて需給見通しの策定方式の一部を変更した。第一は、主食用米等の生産量を「従来の1.70㎜篩い目幅以上」から「主食用として供給が見込まれる米の生産量(生産者篩い目幅ベース+それ以外に主食用として流通する米)」に改めた。第二は、従来までの減少トレンドから1人当たり消費量(精米ベース)を算出し、直近5年の平均値から直近5年の最大値を使用する。第三は、インバウンド需要量を考量する。第四は、精米歩留りを5年平均で補正する。

 以上の算出方法にもとづいて、令和7/8年主食用米等需要量は、1人当たり精米消費量が令和4/5年49.7㎏、令和5/6年が49.9㎏、令和6/7㎏が50.7㎏であった。5年平均が50.2㎏、最大が50.7㎏、インバウンド需要量の6.1万t及び精米歩留り89.6%を踏まえて、玄米ベースで697~711万t(精米ベース624~631万t)に設定している。令和7年産主食用米等生産量を748玄米t(予想収穫量715玄米t+生産者ふるい目幅未満の32万玄米t)である。その結果、令和8年6月末民間在庫量は215~229万玄米tと算出した。

 令和8/9年では、1人当たり米消費量50.2~50.8精米㎏、インバウンド需要を6.6精米tとし、需要見通し622~630万精米t、玄米換算694~711万tと算出した。その需要見通しにもとづき、令和8年産の生産量見通しを711万玄米tと推計した。その結果、令和9年6月末の在庫量を215~245万玄米tと推計している。

 以上の需給見通しをみると、令和8年6月末民間在庫量が215~229万玄米t、令和9年6月末在庫量が215~245万玄米tであり、過去の在庫量と比べると両年とも最高水準となっている。この水準で推移すると、相対取引価格等の各種米価は、低い水準で推移する可能性を否定できない。

 さらに、需給見通しの需要量は過去5年間の消費動向の実績からの推計であり、需給見通しに示された生産量が遵守されることを前提として算定される。しかし、史上最高に高騰した米価水準のもとでは、消費動向や生産者の作付け意向に変化が生じる可能性が強い。需要量の算定では、価格が高騰した令和7年の消費量が考慮されていない。生産者も価格高騰のもとで主食用米の作付拡大意向をもっている。以下、価格高騰のもとでの米消費動向と消費減の動き及び令和8年産生産目安の動き、生産者の作付意向を検討し、需給見通しとの違いを明らかにし、今後の価格動向を検討する。



3.米消費動向-価格高騰による米消費減、消費動向の変化

(1)令和7年1人1月当たり精米消費量の対前年比減

 米価高騰の下で、米消費量が減少しており、令和7年の一時的な現象ではなく、今後も継続する可能性が強い。米穀機構調査による1人1月当たり精米消費量は令和7年3月~12月までの10カ月連続、前年比を下回っている。減少率も4~7月までの4カ月連続、9%以上、10月も4.1%減、11月7.8%減、12月が6.3%であり、大幅な減少となっている。なお、家庭内消費量4月から12月までの9カ月連続の減、4~8月、11月は10%以上、12月も8.1%の減である。中・外食消費量は令和6年12月から10月まで11月連続減、12月も減であり、1月、3~4月、6~8月の6カ月は5%以上の大幅減となっている。


表2 米の1人1カ月当たりの消費量の推移 (単位:精米グラム/人、%)

表2

(出典:(公社)米穀安定供給確保支援機構・米の消費動向調査)


(2)米価高騰のもとでの「米購入頻度」の減少と習慣化

 スミセイ「わが家の台所事情アンケート」2025によると、「令和の米騒動」で「米の購入を控えたことがある人」が26.4%、「売り切れで買えなかったことがある人」が23.9%であり、約半数が米の購入を減少させている。

 全国地方紙18社と日本農業新聞のアンケート(令和7年6月調査)によると、消費者の食べる頻度は「減った」が34%、「変わらない」が66%である。さらに、日本農業新聞は「その頻度の減少が習慣化し、米消費減少加速化する」と指摘した。


図1 価格上昇以降、米を食べる頻度

図1

(出典:19紙合同アンケート結果より)


 また、食べる頻度が「減った」という消費者の中で、今後の頻度について、「増やしたい」が43.1%、「変えるつもりがない」が39.6%、「減らしたい」が17.3%である。食べる頻度を減少させた約4割の家庭が米の頻度減少を固定させる傾向になっている。


図2 価格上昇後、コメを食べる頻度は(消費者)

図2

(出典:19紙合同アンケート結果より)

(注:アンケートに参加した19紙 北海道新聞、東奥日報、河北新報、下野新聞、上毛新聞、東京新聞、神奈川新聞、新潟日報、北日本新聞、北陸中日新聞、福井新聞、信濃毎日新聞、中日新聞東海本社、京都新聞、中国新聞、西日本新聞、宮崎日日新聞、琉球新報、日本農業新聞
・アンケートは5月9~23日の間、各紙がLINEなどを通じて募集、7,110人が回答した。内訳は消費者6,346人、農業関係者はコメ生産者501人、コメ生産者以外が263人。)

 さらに、前記の19社調査からほぼ6カ月後の日生協調査11月によれば『直近の6カ月において、米の価格上昇にともない、お米を食べる頻度が変化に関して、「変わらない」が80.0%、「減少した」が16.9%』である。価格上昇による頻度が減少した5月以降(19社調査で36%が購入を減少)でも、さらに購入頻度の減少が強まったのである。

 ところで、前記「わが家の台所事情アンケート」によると、「物価上昇の影響を受けている家庭の75.6%」が「家計を切り詰めている」。「削減・節約に取り組んでいる費目」は、トップが「食費」で49.2%である。「食費」のなかで、最も値上がりしているのは、「米」である。また、調査会社・株式会社インテージの調査(注)では米の販売額が前年比に比べて62%も上昇しており、他の品目に比べて高い上昇率となっている。

(注)株式会社インテージのプレスリリース(12月9日付)より(「米産業・米市場取引に関する情報 その4:1(1)」にも引用)

 前記・日生協アンケートによると「お米の代わりによく食べるようになったものがある」が17.2%である。また、前記19社調査によっても「食べる頻度が「減った」と答えた人では、対応策(複数回答)として「パンや麺類を増やした」という人が8割近くに上った。

 以上のように、価格高騰により、令和7年には1人1月当たり精米消費量が大幅に減少し、米の購入頻度を減少した家庭が34%で、約半分がその頻度を維持するとしている。さらに、6カ月後の11月の日生協調査では16.9%が購入頻度を減少させている。米消費の減少が進展し、今後もその傾向が定着する可能性が強い。

 需給見通しの需要量は過去5年間の消費動向の実績からの推計であり、米価高騰のもとでの令和7年の消費動向を考量していない。需要量は、需給見通しより減少する可能性が非常に強い。


(2)民間輸入米の大幅な増加と外食産業での使用の定着化

 国産米の需要を減少させるもう一つの要因は、価格高騰による輸入米の増加である。まず、主食用に仕向けるSBS入札は年間枠10万tが全量落札され、民間輸入量は約10万tに達し、20万tと予想される。

 SBSの全量落札は2年連続であり、2017年度以来となる。平均落札価格は初回(6月27日)が406円(㎏当たり)だったが、第四回(11月14日)は565円であり、1995年の入札開始以来の最高値となった。しかし、その価格でも国産米と比べて割安感があり、引き合いが強い。

 さらに、日経新聞(12月18日)によると、米の民間輸入量は1〜11月は92,968tと前年同期の104倍に達した。国産米の高騰によって関税を払っても採算が取れるようになり、需要が高まったためで、SBSで輸入する主食用枠の10万tに迫る水準である。5日公表の財務省の貿易統計によると、年600〜800tで推移して民間の米輸入量は、2024年度に前年度の約4倍の3,011tに増え、2025年7月に過去最多の26,397tを記録し、11月の輸入量も2,787tだった。

 民間がSBS枠を超えて輸入すると1㎏あたり341円の関税がかかる。高関税によってコメ農家を海外との価格競争から守ってきた。11月の米国産の輸入単価は1kg141円だった。341円の関税を加えても500円を下回る。国産の銘柄米の平均店頭価格は3月以降5kg4,000円台が続き、輸入米の価格優位が強まった。

 米価高騰や供給難で混乱した「令和の米騒動」を経て、輸入米への需要が特に高まったとみられるのが外食産業である。

 コロワイドは25年2月から米カリフォルニア産の「カルローズ米」の使用を始め、同社の全外食業態の毎月のコメ使用量の約15%を占める。居酒屋業態や焼肉店「牛角」の一部で提供する。

 利点については「国産米の需給が逼迫した際に、調達の安定化とコストの最適化を図れる」(同社)と語る。今後も「品質条件を満たすことが前提で、品種や数量は国産米の需給や相場動向に依拠する」とした上で、提供を継続する方針である。

 吉野家ホールディングス(HD)は2023年春から牛丼店でミニマムアクセス米と国産米をブレンドして使っている。メニューに合わせてブレンド比率を変えている。その理由は、集荷業者が農家から買い取る米価格が高くなったためである。集荷業者から卸売業者への販売価格も2025年産米は11月までの平均で玄米60kg36,803円(全銘柄平均)と前年産の1.5倍である。そのほか、セブンイレブンでは、チャーハンおにぎりとライスパーガーの原料米をオーストラリア米へ、ローソンでは「恵方巻き」にカルローズを混ぜて使用する。

 大手コメ卸は「外食など業務用では安いコメの需要が根強いため、関税を払ってでも民間輸入に動き、国産米とブレンドして卸している」とのことである。

 以上のように、価格高騰により1人1月当たり精米消費量は令和7年3月~12月までの9カ月連続、前年比を大幅に下回っている。この消費減の動きは令和8年以降も継続する可能性が強い。前記18社のアンケートでは消費者は「食べる頻度減った」が34%、「変わらない」が66%である。食べる頻度が「減った」という消費者の中で、約4割が米の頻度減少を固定させる傾向になっている。

 さらに、令和7年の民間輸入米が約10万tとなり、SBSを含めると輸入米が20万tに達している。価格動向にもよるが、民間輸入米が定着し、国内産米の需要減となる。

 したがって、令和7年の国内産米の需要が減少しており、8年でも需要減が継続する可能性が強い。

 ところで、需給見通しでは令和7/8年及び令和8/9年米の需要量は、直近5年の1人当たり消費量の平均、最大数量をもとに算出した。直近5年には、米穀機構調査で1人1月当たり精米消費量は令和7年のデータが反映していない。また、インバウンド需要量が盛り込んでいるが、大幅に増加した輸入米(SBS及びそれ以外の輸入量10万t)を考慮していない。以上の諸点から令和7/8年及び令和8/9年の米需要量は、需給見通しの米需要量より少ないと予想される。その減少分が6月末民間在庫を増大させ、相対取引価格等の米価の低落の要因となる。



4.令和8年産生産目安と生産者の主食用米作付動向

(1)令和8年産生産目安は米主産県(除く北海度、青森、岩手)では令和7年産実績より減、その他は実績より増

 需給見通しによる令和8年産主食用米等の生産基準数量は711万tであり、令和7年産目安694万tに比べ、17万tの増加であるが、7年産供給量(実績)748万t比べ、37万tの減である。

 農林水産省の1月16日現在の全国合計の生産目安は、134万4,000ha、725万tであり、令和8年産生産見込数量の711万tを14万t(2.0%)上回る。今後の作付動向や作況により変化するが、令和9年6月末の民間在庫量は229~259万tに増大すると見込まれる。米消費が減少する場合には、在庫が積みあがる可能性がある。

 令和8年産の生産目安は、令和7年産目安を約45,000ha、22万t上回るが、実績と比べると23,000ha(1.7%)、21万7,000t減である。

 数量ベースの目安対比では北海道、東北5県、関東7県等の35道府県で増加、面積ベースでは東北6県、関東6県、北陸3県等36府県が増加である。

 実績対比では数量ベースで北海道、東北2県、中四国、九州等20県で増加、面積では、東北2県、北陸2県、中国4県、九州5県等20県で拡大傾向にある。

 「本紙調査の各県目安の上振れ分を反映すれば、生産量は約723万t、令和9年6月末在庫量も227~257万tに積み増しされる」(日本農業新聞1月15日)「現時点での目安をみる限り、需給緩和に向かうのは避けられない」。


(2)生産者の令和8年産主食用米の作付意向-根強い作付拡大意向

 生産目安だけでなく米価格の高止まりのもとで、生産者も令和8年産の主食用米を作付拡大の意向をもっている

 生産者の生産意向調査(農林水産省 令和7年10月8,095名(うち個人6,845、法人1,250;うち 平場:5,104、中山間:2,991))によると、「34%が令和7年産主食用米作付を増加、29%が令和8年産作付拡大の意向」をもっている。令和7年産の主食用米の作付面積の対前年との増減は、「増やした」が2,716(34%))「変わらない」が4738(59%)、「減らした」481(6%)である。経営面積を拡大した例もあるが、米価高騰と飼料用米の要件が厳格化したことが影響して、約1/3の生産者が用途限定米穀や麦、大豆の作付面積を減少させ、減少した面積から主食用米の作付面積を増加させたことを示している。

 令和8年産において主食用米の作付意向をみると、「増やしたい」が2,362(29%)、「分からない」が829(10%)、「現状維持」が4,555(56%)、「減らしたい」が349(4%)である。「増やしたい」理由は、「販売価格が高いから」が1,279(44%)、「既存の集荷業者からの引き合いが強い」が522(28%)、「新しい集荷業者からの引き合いが強い」が289(10%)である。

 今回の調査は8~9月なので、価格高騰及び集荷業者の引き合いにより約3割の生産者が主食用米の作付拡大の意向をもっている。同時に、令和7年産に主食用米の作付増の部分は作付減になっていない。

 日本農業新聞・集落営農調査(令和7年11月)のアンケートによると、「主食用米の増、転作減」が20.4%であり、「主食用米減、転作増」が6.1%、「変えない」が55.1%である。

 以上のように、米価の動向等や用途限定米穀に対する助成等の影響を受け、実際の令和8年産主食用米の作付面積・用途が変動するが、現時点での各道県の生産目安や生産者の作付意向をみる限り、令和8年産の作付面積は、国が需給見通しでの適正水準を上回る可能性がある。

 米価の高止まり状況が継続しているが、スポット取引では売り過剰、買い不足で価格下落が始まっている。同時に、需給見通しでの令和8年6月末、令和9年6月末の民間在庫量は、過去最高水準である。過去の事例をみると、需給見通しの民間在庫量の場合、相対取引価格が13,000~15,000円である。以上の諸点が今後の米価が大幅に下落する懸念の根拠である。さらに、米価高騰のもとで、米需要量は需要の見通しより減少し、令和8年産の作付け面積も需給見通しの適正水準よりも上回る可能性が強い。したがって、米価高騰のもとで、令和8年及び令和9年の6月末民間在庫量が増大する可能性も強い。

 「需要に応じた生産」のもとでは、民間在庫量を減少させる手段は、「生産調整」の強化及び「備蓄米の買入、買戻し、民間在庫実験事業」である。当面、備蓄運営の規模、価格、運営方法が注目される。

 根本的には「需要に応じた増産」に転換し、所得補償を通じて米価の引き下げを通じた輸出を含めた需要拡大である。

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