日本の農業:第247集:「地方分権改革」と農業補助金
■発行日:2013(平成25)年3月11日
■対象:北海道
■報告:堀部 篤 (全国農業会議所農地・組織対策部調査役)
■コメント:守友 裕一(宇都宮大学農学部教授)
■在庫:なし
■ページ数:120p.
■目次:
- 要旨…1
- 第一章 課題と方法…5
- 第二章 農業補助金の「一般公共事業化」による市町村の役割の増大…20
- 第三章 北海道農村部町村における農業施策展開と財政構造との関係…47
- 第四章 「国策積極利用型」市町村による農業施策展開と財政構造―北海道A町を事例として―…67
- 第五章 「単独施策中心型」市町村による農業施策展開と財政構造…86
- 第六章 結論…106
- コメント…113
■要旨より:
本稿では、1980年代中葉から2000年代初頭までを対象に、「地方分権改革」による農業補助金の執行体制の変容を、国と地方自治体との財政関係の視点から明らかにした。
一般に「地方分権改革」は、1993年5月衆参両院における「地方分権の推進に関する決議」が行われたことを契機とされるが、補助金制度においては、1980年代中葉の臨調・行革路線以降、「増税無き財政再建」と「地域の自主性の強化」が近年まで一貫して求められており、本稿はこの時期を対象にしている。
「地方分権改革」の進行は、当然、農業政策、農村地域にも大きな影響をおよぼしてきた。特に、総額7兆2,100億円(中央政府6兆100億円、地方政府1兆2,000億円)にのぼる1990年代後半のガット・ウルグァイラウンド合意対策の大半は、農業生産基盤整備や農村生活関連施設の建設等の公共投資であり、その執行は「地方分権改革」の進行とともに行われた。このような大規模な農業補助金の執行に関して、その事業内容や負債金額の大きさから批判的な目で見られることが多いが、①なぜそのような事業が計画されるのか、②地方自治体はどのような意図でその事業を執行するのかといったことは、明確となっていない。
このような農業補助金の執行について農業経済学界では、石原健二による一連の研究成果がみられるが、蓄積は豊富であるとは言い難い。石原は、農業農村整備事業における地方債や地方交付税を活用した執行の仕組みやUR合意対策の展開について主に事業内容を中心に整理した上で、ある県を対象として、県と市町村がどのように対応したのかについても考察しているが、市町村については数町村の農地費と公債費比率を比較にとどまり、事業内容、財政対応については詳細な分析は行われていない。・・・
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