のびゆく農業:No.1054:2021年CAP改革の環境・気候対策概要
・2021年CAP改革の環境・気候対策概要
■発行:2021年6月30日
■解題:近藤 巧(農林水産省)・平澤 明彦(農林中金総合研究所)・小嶋 大造(東京大学)
■翻訳:近藤 巧(農林水産省)
■対象:EU
■ページ数:22p.
■在庫:あり
■目次:
解題
CAP 改革を欧州グリーンディールに適合させるための欧州議会やEU 理事会との協働
欧州委員会の提案
現状はどうなっているか
欧州委員会法制案の基本的な要素
なぜ十分に意欲的でないコンディショナリティの要件では、CAPを環境親和化する公約に十分応えることができないのか
戦略計画の承認と実施
■解題より:
本稿では、EU の共通農業政策(CAP)の2021 年改革に関して、2020 年11 月に欧州委員会が公表したファクトシート「CAP 改革を欧州グリーンディールに適合させるための欧州議会やEU 理事会との協働」(Working with Parliament and Council to make the CAP reform fit for the European GreenDeal)を翻訳する。このファクトシートは、本稿を執筆している2021 年2月末時点で、欧州委員会が2021 年CAP 改革の環境・気候対策に関する概要をまとめた最新の文書である。欧州委員会のホームページ上のCAP に関するページ(The common agricultural policy at a glance)に掲載されている。このページにおける当該ファクトシートの箇所で以下のような説明がなされている。「将来に向けて欧州農業の役割を確固たるものにするために、CAP は経済状況の変化や市民の要求やニーズに対応するよう長年にわたって進化してきた。2018 年6 月1 日、欧州委員会はCAP の将来に関する法制案を発表した。法制案は、欧州グリーンディールの持続可能な意欲的目標を取り入れた、よりシンプルで効率的な政策という形で、CAP の進むべき道のアウトラインを示している。将来のCAP 改革は、欧州議会とEU 理事会の最終合意を待って、2023 年1 月1 日から実施される予定である。」
以下では、まず、このファクトシートの背景として、2021 年CAP 改革の経緯を概観し、ファクトシート中の注目される点を指摘したい。その後、CAP 改革に関心をもつ読者を念頭に、CAP 改革に関する文書の調べ方や、CAP に関する参考文献を紹介することとしたい。なお、CAP 改革は主要法制に関する政治的合意の成立年で呼ばれるのが通例である。もともと2021 年CAP 改革は、2021 年から実施されるはずであったが、ブレグジットの影響でこれがずれ込むこととなった。その改革内容は、以下で説明するとおりまだ正式に決定されていないが、2021 年中の合意が見込まれているため、ここでは2021 年CAP 改革という用語をもちいることとする。