講演会報告:安藤光義氏「イギリスの農村政策―日本への示唆―」
日本における小農のような農家は囲い込みによって消滅させられており、そのため産業化された農業は環境破壊産業として見なされていること、その一方で、中産階級が田園での暮らしを求めて移住するという逆都市化が起こっており、英国農村は憧れの対象である、という日本の農村をみているだけでは想像し難い実状がここで改めて示されました。締めくくりとして、イングランドでは将来の農村像についてどのようなものとして展望するか、について思考実験が行われていたことを引き合いに、同じ事を日本で考えてみるとどうなるだろうか?という投げかけがされました。
英国では農村=農業で生計を成り立たせているとはみなされておらず、農村での生活を確立するという視点から農業政策ではなく農村政策がとられています。今回ご報告いただいた内容から日本農業への直接的な示唆を得ることは難しく、条件不利地域農業や地域のコミュニティへの施策について農業政策の枠組みで参考とするには、フランス等他の英国以外の国の動向にも着目していく必要があるのではないか、とも触れられていました。その後活発な質疑応答が交わされ、閉会となりました。
関連図書(「のびゆく農業」以外)
『英国農村における新たな知の地平―Centre for Rural Economyの軌跡』
農林統計出版 2012年 安藤 光義・フィリップ ロウ編
(文責:竹島 久美子)