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理事長の部屋:米価の現状と今後の水田経営 直接支払制度の充実を

■従来の政策と水田営農を転換、過度の米依存から脱却■

 さらに人口減、高齢化社会を迎えて、米消費減と消費形態の変化が加速化する。したがって従来の政策と水田営農の転換と米の新たな需要拡大が求められる。すでに一部の法人経営や北海道では、野菜作や大豆などを含めた経営の複合化、多角化をしている。米に過度に依存した経営は政策変化や補助金の増減で影響を受けるからである。

 今年産でも経営内部で大豆などの転作や野菜などの比重が高い水田経営の所得減は小さい。また米の需要拡大は、餌米、米粉だけではなく機能性食品(低タンパク米など)などの高齢化・健康志向という社会の変化に沿った開発が必要となっている。

 もう一つは米および日本酒などの加工品、機能性食品の輸出である。輸出は餌米、米粉と比べると価格差が小さい分野であり、過剰時の有効な市場隔離策でもある。本年は輸出米よりも概算金のほうが安いという事態も生じている。

■政策的助成と一物多価を解消、多面的機能など加味を■

 新たな需要拡大には、現状の主食用米よりも価格水準が低く、政策的な助成が必要となる。現行の助成額がバラバラであり、一物多価となっている。今後、新たな需要拡大、製品開発を実現するには価格の平準化と水田営農への直接支払いの充実が必要である。4年後には直接支払いも、「生産調整」もが廃止され、生産者手取りの減少は、日本型直接支払いやナラシ対策でカバーできない。

 水田営農は日本の国土と地域社会の柱であり、新たな水田営農への直接支払い(米ではない)が必要となる。直接支払いは生産コストと価格との差額を補填する目的とともに、地域農業の振興、多面的機能の維持、環境保全、水田の保全などが目的とする複合的なものである。生産者は後者の部分について具体的な営農を義務づけられる欧州連合(EU)型である。

■公的米市場の復活、ナラシの新たな制度設計が必要■

 今回の一連の事態は、公的な米市場が存在しないため、市場動向やニーズを的確に生産者などへ情報を発信できない欠陥も露呈した。公的な米市場の復活が不可欠であり、価格変動による経営への影響を緩和するには米価がなだらかに低下することを想定した「ナラシ対策」の新たな制度設計も必要となる。以上のシステムは輸出を含めた米の新たな需要拡大と水田営農の転換を実施する前提条件でなければならない。(了)

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