短報・コラム:農村女性起業とアントレプルヌース
―千葉県茂原市本納地区のフィールドリサーチ―
2013年2月23日(土)、日本農村生活学会の関東支部研究会(平成24年度・第2回)に参加した。今回は、同学会農村生活研究大会のラウンドテーブルで報告された秋葉節子氏(農村女性起業家)のフィールドを探訪することをテーマとして開催された(注1)。
「農村女性起業」という言葉は、1992年「農山漁村の女性に関する中長期ビジョン」(農林水産省)において初めて用いられた。それから20年が経過した現在では、全国各地において農村女性起業が地域活性化の主役として展開している。秋葉氏は、そうした「農村女性起業家」をリードするお一人である。
以下では、当日のフィールドリサーチをもとに、直売所「旬の里 ねぎぼうず」、農家レストラン「栗々山房」、加工所「北のおもちやさん」の取り組みを紹介してから、農村女性起業家の基本概念について若干の言及を行う。
2.直売所「旬の里 ねぎぼうず」
今回は、農林水産関連の普及員・行政官、研究者ら10名が参加した。JR外房線本納駅から徒歩5分で行ける直売所「旬の里 ねぎぼうず」に集合して、茂原農産物直売所運営組合・組合長の中村幸男氏から同直売所の事業内容について説明を受けた。
直売所に旬の野菜が集まること、茂原市とくに本納地区が長ネギの産地として有名であることが、この直売所の名称「旬の里 ねぎぼうず」の由来であり、この二つの名前は、いずれも市民からの公募によって命名された。施設は茂原市が整備し、運営は茂原農産物直売所運営組合が担当している。直売所では旬の野菜・果実、花植木のみならず、太巻き寿司などの惣菜、秋葉氏が出荷している餅加工品などを販売している。
筆者も他の参加者と同様にいろいろと購入したが、なかでも店内で出会った常連客に勧められて購入したイチゴは、常連客の言うとおり、大変甘くてフレッシュであった。こうした常連客が、「口コミ」の主体となっていると筆者には思われた。ソーシャルネットワークや社会関係資本が直売所に果たす役割は大きいであろう。満足のいく買い物ができた。
定期的に開催しているセールは人気イベントとなっており、新鮮でおいしい旬の野菜を目当てに、予約してまとめて購入する顧客もいる。事前に往復ハガキでセール開催の案内状を送るなどの丁寧なマーケティング活動が、リピーター獲得を成功させている。今後は、出荷者の後継者をどうするかが課題となっているが、最近では農業大学校出身の夫婦が新規就農する例もあるとのことである。
注:
(1)当日の関東支部会の詳細については、日本農村生活学会のホームページを参照。また千葉県内の農村女性起業家については、千葉県のホームページを参照。さらに澤野久美『社会的企業をめざす農村女性たち―地域の担い手としての農村女性起業―』(筑波書房、2012年)は、全国各地の多様な農村女性起業の実態解明の成果を報告している。