短報・コラム:農村女性起業とアントレプルヌース
―千葉県茂原市本納地区のフィールドリサーチ―
筆者は、今回お二人の女性にお会いして、まさに彼女らが「農村女性起業家」であり、アントレプルヌース(Entrepreneuse)であることを確信することができた。一般的に起業家はアントレプルヌール(Entrepreneur)と呼ばれるが、女性の場合はアントレプルヌースと呼ぶ。研究者のなかには農村女性起業家をアントレプルヌースと呼ぶに相応しくないとする者もいるようであるが、筆者に言わせれば、それは全くの誤解である。起業家(ないしは企業家)概念を提唱したJ. A. シュムペーター自身も、事実、まさにこうした一見つつましい起業家活動とビジネスの現象を重視していた(注5)。
家族経営が中心である日本の農業・農村において、女性の役割は極めて大きく、彼女らはいつも元気に振る舞ってきた。そのような日本の農業・農村からアントレプルヌースが登場したことは、その活躍の基盤を作り支えた多くの人びとの努力の成果であり、なおかつ21世紀日本社会の歴史的帰結として考えることもできる。しかしまずなによりも、今回お会いしたようなアントレプルヌースの経営構想力が、農村女性起業の原動力となっていることはいうまでもない。
注:
(5)Joseph A. Schumpeter, The Creative Response in Economic History, The Journal of Economic History, Vol.7, No.2, Nov.1947, pp.149~159.
謝辞:
今回のフィールドリサーチでは、直売所「旬の里 ねぎぼうず」の中村幸男氏、農家レストラン「栗々山房」の鈴木憲子氏、加工所「北のおもちやさん」の秋葉節子氏にお忙しい中対応していただいた。また、会長の安倍澄子先生(日本女子大学教授)をはじめとする日本農村生活学会の皆様、今回の研究会の企画運営を担当された関東支部支部長の宮城道子先生(十文字学園女子大学教授)、澤野久美氏(現・JSPS特別研究員)にも大変お世話になった。皆様に改めて感謝申し上げます。
(研究員・佐藤奨平)