「意見ひろば」:食料自給率考
ここで改めて、戦後の我が国の人口の推移を見てみよう。我が国の人口は、戦後異常ともいえるスピードで増加をみている。60年の人口は93.4百万人であるが、2010年には128.1百万人と、60年を100とすると2010年は130であり、最近の50年間で3割も増えている(図4)。その人口増加に見合うだけの国内生産による食料供給が確保されていれば問題は生じないが、確保できなければ不足分は輸入に依存することになるので、食料自給率は否応なく低下する。先にも見たように、60年といえばまだ国民に対し十分な食料供給が行われていない時である。そこに人口増が追い打ちをかける。
本論から若干離れるが、食料と人口との関係については、食料問題とは何かということを考えれば分かり易い。昨今は環境問題との関連がクローズアップされ、それが深刻な問題となりつつあるが、食料問題の発端は人口増であり、同時に食料の偏在による発展途上国を中心にした深刻な飢餓問題である。我が国でも国際的な食料問題、食料需給問題を議論する場合には、一般的に世界の人口増問題と関連づけて行なっているが、国内の食料問題になると、何故か人口問題は等閑視されてきている。今回の基本計画の策定に当たり、関係資料の一部に少子高齢化の問題とともに人口が将来的に減少する図が示されたとはいうものの、摂取カロリーの今後の推移を推計するために使われたと見られるにとどまり、基本計画の本体部分の議論では全く問題視されていない。 それはとも角として、図4は、食料自給率の推移と我が国人口の推移との関係をみたものである。明らかに逆の相関関係が見られ、逆相関係数も-0.9762と逆相関の強さを示す。