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「意見ひろば」:食料自給率考

 では我が国の場合、どの程度の人口が適正なのかとなると極めて難しい問題であり、何をもって適正とみるかという問題もある。しかし、敢えてここで議論のための素材提供という意味を込めて、筆者なりの試算を示してみたい。

 宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の中に「一日ニ玄米四合ト味噌トスコシノ野菜ヲタベ」という一節がある。作品が発表された当時(賢治没後1年後の34年)の我が国では、玄米4合は、大人1人1日分の所要エネルギー源として一般庶民のごくありふれた食事であったと考えられるので、それを前提に、我が国の水田をフルに活用して米を生産した場合に何人程度養えるかを試算してみた、その結果を示したのが、図10である。1885年からの推移であるが、稲作技術の向上に伴う反収増や水田の増減も加味した結果であり、戦前は4~5千万人であったが、戦後は6~7千万人と見ることができる。

図10 水田面積から見た適正人口の推移   資料:田面積は(財)農政調査委員会編「改定日本農業基礎統計」及び農林水産省「耕地及び作付面積統計」、米反収は農林水産省「作物統計」から筆者作成 注:図9の注2に同じ

図10 水田面積から見た適正人口の推移

資料:田面積は(財)農政調査委員会編「改定日本農業基礎統計」及び農林水産省「耕地及び作付面積統計」、米反収は農林水産省「作物統計」から筆者作成
注:図9の注2に同じ

 もとよりその間、特に戦後は米の消費量が急速に減少したことは先にも述べたところである。しかし、一方で、肉類、鶏卵、牛乳・乳製品の消費量が大幅に増加した。牛肉1kgを生産するのに必要なとうもろこしは11kg、豚肉の場合は7kg、鶏肉は4kg、鶏卵は3kg、牛乳は4kgとされるので、米が減った代わりにとうもろこしを作ることになるが、そのときに必要とされる耕地面積は、我が国におけるとうもろこしの反収を前提に試算すると、稲作の縮小分を上回る耕地が必要となる。現在の食料消費構造からすれば、計算式にもよるが、適正人口は5~6千万人としてもおかしくはない。なお、ここでの試算は、食料問題に限定した適正人口であり、日本国のあり方としてみた場合には、社会経済、環境、資源などなど我が国を取り巻く諸要素全体を俯瞰することが求められ、別の議論になることをお断りしておきたい。

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