「意見ひろば」:食料自給率考
(3)どのように見る平成の食料自給率動向
第3に、平成に入ってからの食料自給率の動きはそれまでの流れと大きく変わりつつあるのではないかということである。食の面でも成熟期を迎えているので、当然予想されることである。
平成に入りすでに30年近くを経過する。図8は、95年(平成7年)を基準に食料自給率をはじめ人口、高齢化率、1人当たりの総供給熱量及び米による供給熱量の推移を指数化して示したものであるが、特にこの20年近くの動きはそれまでの動きとかなり様相が変わりつつあることが窺われる。この間の食料自給率の低下は3~4ポイント程度で、それ以前に比し低下傾向はかなり緩慢になり、時に上昇も見られる。この間、人口増加は引き続き続くが、増加速度は緩慢になる。それどころか、図には反映されていないが、11年(平成23年)以降は減少に転じる。一方、高齢化が急速に進み、1人当たりの供給熱量も低下を示す。しかし、米の供給熱量はそれ以上に低下する。
平成に入り、成熟社会の中で健康志向が強まり、食の安全・安心への関心が高まる。働き方も大きく変化しつつあり、少子高齢化など食料消費や食料供給構造などへの影響にはかなり大きなものがあると思料される。今後の食料自給率を見る場合には、そうした新たな要因が、人口構成の質、量とともに自給率計算の分母となる「食料消費」に大きな影響を持つ一方、全体の食料消費量は中長期的には横ばいないし低下に転じる可能性が高いだけに、分子の「国内供給」が自給率に果たす役割が増大するものと考えられる。