「意見ひろば」:食料自給率考
では、新基本法に基づき平成12年3月に初めて策定され、閣議決定をみた基本計画ではどうか。同法の食料自給率の目標については第15条第3項で「国内の農業生産及び食料消費に関する指針と」するということになっているので、そこではどのように理解されているのかを次に見てみよう。
基本計画の第1で、食料、農業及び農村に関する施策についての基本的な方針を掲げている。その冒頭部分で、「食料の安定供給を確保することは、社会の安定及び国民の安心と健康の維持を図る上で不可欠である」としたうえで、世界の食料需給について「中長期的には世界の食料需給はひっ迫する可能性もある」と指摘する。そして「こうした中で、我が国の食料自給率は、…年々低下し、…世界最大の食料純輸入国となっているが、・・・自国の資源を有効に活用して国民への食料の安定供給を確保する」ことが重要で、「我が国が世界の食料需給の安定に貢献する」ことになるとする。前述の食料自給率をめぐる議論の背景と同じことがここには記されている。
そして一歩踏み込んで、「需要の動向に即して食料供給を行うこと」が重要であると強調する一方、食料消費の面では、「食生活の変化に伴う栄養バランスの崩れ」や「食べ残しや食品の廃棄等の発生」問題を重要な課題として強調する。
そして、「このような状況を踏まえ、食料自給率の目標を、その向上を図ることを旨とし、国内の農業生産及び食料消費に関する指針として、関係者が取り組むべき課題を明らかにして定め、その達成に向けて、国、地方公共団体、農業者及び農業に関する団体、食品産業の事業者並びに消費者が一体となって努力していかなければならない」とする。
続く基本計画の第2は、食料自給率の目標であるが、その冒頭で食料自給率の目標の意義について述べている。若干長くなるが重要な部分であるのでそのまま引用する。
「国民に対する食料の安定供給については、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行う必要があるが、食料自給率は、国内の農業生産の増大を図る際に国内の農業生産が国民の食料消費にどの程度対応しているか評価する上で有効な指標である。
また、食料自給率は、国内の農業生産だけでなく、国民の食料消費の在り方によって左右されるものである。
したがって、食料自給率の目標を掲げることは、国民参加型の農業生産及び食料消費の両面にわたる取組の指針として重要な意義を有する。
さらに、食料自給率の目標を策定し、平常時において、その達成に向けて、必要な農地、農業用水等の農業資源の確保、農業の担い手の確保及び育成、農業技術水準の向上等を図ることは、我が国の食料供給力を向上させ、国内外における不作、国際紛争による農産物の輸入の大幅な減少や途絶等の不測の事態が生じた場合に、国民が最低限必要とする食料の供給の確保を図ることにつながるものである。」
こうした考え方は、そのまま平成17年、平成22年そして昨平成27年に策定された基本計画に引き継がれていく。自給率の考え方として、一般論としてはもっともなことであり、また食料自給率の現状はできるだけ詳細に国民に示すべきだと考えるので、考え方自体をここで特に問題とするつもりはないが、目標設定の意味の説明に甘さを感じる。