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「意見ひろば」:食料自給率考

 (2)食料自給率問題の背景

 わが国で食料自給率が大きな問題とされる背景については、今さら改めて述べるまでもないことであるが、今後の我が国の食料問題を議論する場合の共通認識となる事柄であるだけに、ここで簡単に整理しておきたい。

 わが国の食料需給をめぐる現状については、基本問題調査会でもかなりの議論が行われているので、ここでは、平成9年12月開催の基本問題調査会に提出された「食料・農業・農村基本問題調査会中間とりまとめ」(以下「中間とりまとめ」という。)を中心に引用してみたい。

 「中間とりまとめ」ではまず、「我が国においては、近年、所得水準の向上を背景に豊かな食生活が実現した半面、国内農業生産によりまかなわれる食料供給の割合(食料自給率)は低下し、平成7年度におけるカロリーベースでの自給率(供給熱量自給率)は42%、穀物自給率は30%と、先進国の中では極めて低い水準となっている。」とする。そしてその結果、「我が国は世界最大の食料輸入国となっており、経済力を背景に世界中から食料を輸入して消費者の需要にこたえる状況となっている。」(平成9年7月基本問題調査会食料部会提出資料)とされる。

 こうした中で、国内の食料供給を担う我が国の農業生産の現状はというと、「中間とりまとめ」は、
「農地や担い手といった農業生産の基盤が弱まっている。すなわち、我が国の農地面積は減少傾向が続き、耕作放棄地も増加している。また、担い手の減少や高齢化が進行している。」との認識を示す。

 一方、世界の食料需給については、おおむね次のような認識が示されている。

 「世界の食料需給は、次のような背景から、短期的な不安定さが増すとともに、中長期的にはひっ迫することもあると考えられる。

ア 人口の急激な増加と所得の向上に伴う食生活の高度化により、食料需給は、開発途上国を中心に大幅に増加する。
イ 農用地の面的拡大の制約や環境問題の顕在化等農業生産の拡大を図る上で種々の制約要因が明らかになってきている。
ウ 輸出国が特定の国に偏る傾向が強まるとともに、過去の過剰在庫に伴う財政負担や、価格の低迷に苦しんだ経験から、主要輸出国は在庫水準を圧縮させてきている。」とする。

 ただ、このような認識に対しては、一部委員から、食料需給の長期的見通しについては不確定な要素が多いので、こうした見方を基に政策を議論すべきではないという慎重な意見もだされている。

 それはとも角として、
「このような状況の下で、将来にわたり国民に対する食料の安定供給を確保していくことが求められている。」とする。
 先進国の中でも際立って水準の低い我が国の食料自給率をどのように取り扱うかという問題を別にすれば、食料自給率そのものをめぐる現状認識としてはほぼ異存がないところであろうし、こうした認識は、その後の数次にわたる食料・農業・農村基本計画策定時にもしばしば農林水産省の事務当局からも説明されるので、政府の公式見解とみてよいであろう。

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