「意見ひろば」:食料自給率考
3 食料の安定供給のために何を議論すべきか
(1)議論の前提-人口問題
江戸時代の人口は30百万人前後といわれている。国土面積、特に耕地面積からみて、国内で養うことができる人口であったということであろう。しかし、我が国の人口はその後、1880年(明治13年)には36.6百万人、1900年(明治33年)には44百万人、大正末の25年には6千万人、終戦の45年には72百万人と急速に増加している。この間、耕地面積は453万ha(1880年)、533万ha(1900年)、612万ha(25年)と増えてきたが、終戦の45年には逆に539万haにまで減少をみている。しかし、その後60年にかけ607万haにまでまた増加しているが、その後は再び経済の高度発展とともに減少に転じ、2010年には1880年当時の水準にまで戻ってしまった。
図9は、人口増加と耕地面積、それに米の反収の推移を、1880年を基準とする指数でみたものであるが、耕地面積にしても反収にしても人口増加に応じて増加すれば何ら問題は生じない。しかし、図9に見るように、耕地面積の増加は、人口増加に比べると増加テンポが鈍く、逆に戦後我が国が高度経済成長期に入ると急速に減少する。反収にしても、農業技術研究者や農家の努力で相当の水準にまで高められてはいるが、人口増のスピードには追いつけていない。
マルサスの人口論を持ち出すつもりはないが、戦後の我が国の人口は、国土の現状、特に農業生産力からみると過剰といっても過言ではない。