「意見ひろば」:食料自給率考
(3)欠如する国際食料戦略
日本国内の農業生産の実力を評価したうえで、では食料全体の安定供給は、我が国ではどのように考えるのがよいかとなる。食料自給率の現状に見るように、国内で供給できる食料は4割にしか過ぎない。残り6割は、当分の間否応なく輸入に依存せざるを得ない。もとより品目により状況は異なるが、我が国の輸入政策の在り方を含め食料確保のために国際社会でどう生きるか、いうなれば国際食料戦略が問われることになる。国際的に今後の食料需給見通しは益々厳しさを増すといわれているだけに、これこそ国を挙げて考え、議論すべき最重要課題ではないのだろうか。
新基本法は、第15条第2項の基本計画に掲げる事項として、まず「食料・農業・農村に関する施策についての基本的な方針」を挙げる。我が国の食料確保の基本をなすはずの国際食料戦略はまさにここに記載されて然るべきと考えるが、基本法第二節の「食料の安定供給の確保に関する施策」で、第18条が「農産物の輸出入に関する措置」、第20条が「国際協力の推進」と、比較的具体的な施策分野に限定されているためか、現行の基本計画に取り上げられている課題は、その重要性は理解できるものの、問題が矮小化され過ぎてしまっている。国際食料戦略というような輸入の基本に関わる問題への対応ということでは、これまでの基本計画で取り上げられたことはないし、また基本問題調査会や審議会などの場でそうした議論が行われた形跡も見られない。
我が国の置かれた食料の現状を十分に精査しないまま、単純に食料自給率に目標を設定し、その実現に向けて努力しさえすれば問題の解決になると、基本問題調査会や審議会のメンバー、そして事務方が考えているのではないと思うが、新基本法の下でも、国際食料戦略をどう考えるか、基本計画にいくらでも盛り込めるはずである。今すぐにでも議論をはじめ、基本計画に盛り込むべきではなかろうかと思う。