「意見ひろば」:食料自給率考
1 我が国食料自給率の現状
(1)食料自給率の意味
まず、食料自給率とは何か、どのような意味を持っているかについてである。
食料自給率は、一般的に、「国内で消費される食料のうち、国内の生産で供給される食料の割合」(デジタル大辞泉など)とされ、「品目別自給率(米・麦などの品目別に自給率を重量から算出)・総合食料自給率(自給率をカロリーまたは金額から算出)などの種類がある」(同デジタル大辞泉)とされる。
農林水産省によれば、「食料自給率は、国内の食料消費が国産でどの程度まかなわれているかを示す指標であり、FAO(国際連合食糧農業機関)が示す計算方法に準拠して算出」、「食料自給率には、品目別自給率と総合食料自給率の2種類があり、総合食料自給率は、食料全体について単位(カロリーまたは生産額)をそろえて計算したもの」とされる(平成26年3月審議会企画部会提出資料ほか)。ちなみに、FAOは、食料の安全保障を示す共通の指標となる計算方法をいくつか示しているが、国際的にどの指標を標準にするとまでは言及していない。それぞれの国で求められる具体的な政策要請やデータの入手可能性に応じてどの指標を使うのが適切かを選択すればよいという立場である。
いうまでもなく、国内で消費される食料がいつ如何なるときにも国内の生産で賄われ、常に保障されている状況にある場合には、おそらく食料自給率が問題となることはないであろう。しかし、どの国も、何らかの要因で、国内の生産だけでは対応しきれていないのが現実であり、食料は生命の維持に毎日欠かせないものであるだけに、その不足分を補う責務が国に求められる。国は、そのために何らかの施策を講じなければならないとなれば、その検討を行う上で基礎的資料となる、国内供給の可能性または不足の程度を示す指標が求められる。指標の示し方は当然、その目的、使い方などにより様々であり、我が国では前述のように農林水産省が示したものが一般的に使われ、議論の対象とされている。