「意見ひろば」:食料自給率考
(4)食料自給率の目標設定に見る問題点
以上のような考え方を基に、具体的な食料自給率(以下特に断りのない限り「カロリーベース」の食料自給率をいう。)の目標が設定されることになる。平成12年及び平成17年の基本計画策定時にはそれぞれ10年後を目標とした数値として45%、平成22年策定の基本計画ではそれが50%となり、最新の平成27年策定の基本計画ではまた元の45%に戻される。目標が何故45%、50%なのか、そして45%を50%に引き上げたのに何故また45%に戻したのかも問題であるが、筆者がここで問題としたいのは、ここ30年近く50%を大幅に下回る食料自給率の水準が続いている意味について十分な議論もしないままに、しかも安易ともみられる方法で具体的な目標を設定したことである。
目標設定にどれだけの意味があったのか、目標を設定する前にやるべきことがあったのではないかということについては後に改めて触れるが、ここでは、新基本法で食料自給率の目標は「国内の農業生産及び食料消費の指針とする」と規定されているにもかかわらず、農業生産にしても、食料消費にしても、自給率の目標数値と具体的にどのように結びついているのか、特に食料消費については抽象論だけで何も示していないということを指摘しておきたい。
最新の基本計画についていえば、「第2 食料自給率の目標」の「(7)食料自給率の目標」に示された「(第3表)食料自給率の目標等」と「(第1表)平成37年度における食料消費の見通し及び生産努力目標」との関係について、「第1表の食料消費の見通し及び生産努力目標を前提として、諸課題が解決された場合に実現可能な水準として示す食料自給率の目標等は、第3表のとおりとする。」とある。その諸課題には「食料消費に関する課題」と「農業生産に関する課題」とがあり、どのような課題であるかを示してはいるが、それぞれが自給率と具体的にどのような関わりを持つのか、どの程度の寄与を期待しているのかなど、第1表は、国民一般にも理解されやすいように、食料自給率算定に使われる食料需給表の「1人当たり供給純食料」の項目に合わせて示すとともに、具体的な数値の考え方を示すべきではないかと考えるがそうはなっていない。