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「意見ひろば」:食料自給率考

 食料自給率問題が政府の公式文書で本格的に取り上げられたのは平成8年度の農業白書であったかと思う。そして、その後1年半に及ぶ食料・農業・農村基本問題調査会(以下「基本問題調査会」という。)における議論を経て平成11年の食料・農業・農村基本法(以下「新基本法」という。)の食料自給率の目標設定の規定に繋がる。

 しかし振り返って、我が国の食料が置かれている環境の厳しさへの対応として新基本法で食料自給率の目標が設定されたが、国土面積特に耕作適地面積に対し人口が極めて多いが故に食料自給率が著しく低いわが国において、その目標設定にどれだけの意味・意義があったのか、今なお、いささか疑問とせざるを得ない。特に、食料自給率をめぐる基本問題調査会をはじめとする新基本法制定に至るまでの議論、その後の食料・農業・農村審議会(以下「審議会」という。)での議論の経過を辿ってみると、食料自給率の現状評価に対する不適切な認識を今に至るまで一貫して引きずっているのではないかと思料されるだけに、適切な認識のもとに議論が行われていたとすればまた別の結論があったのではないかと思うからである。国民に対する食料の供給は、今後の世界の食料需給見通しなどから国内生産でできるだけの確保を図る必要があるということには反論の余地はないが、それを考慮したとしても、食料自給率に目標を設定する前にやらなければならないことがあった、あるいはあるのではないかということである。若干オーバーな表現になるが、食料に関わる生産から消費に至る多くの課題を意図して食料自給率の目標に結び付けている、食料自給率中心ともみられる新基本法の法体系は、農業に関心のある向きは別にして、国民的関心を引き付けるまでのものにはなっていないし、現状の社会経済政治体制の下では国民的関心を呼び覚ますものとはなっていないのではなかろうか。

 そこで以下、改めて食料自給率とは何か、どのような意味があるのかを見たうえで、我が国の食料自給率の現状とそれを取り巻く状況がどのようになっているのか、我が国における食料自給率論議の限界、食料自給率に代わり何を議論すべきかを整理し、今後の我が国食料問題を議論する場合の論点を提供したい。

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